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強引な営業

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「来週そちら方面へ出向く用事がありまして・・・いかがでしょうか、火曜日か木曜日にお時間頂戴できますでしょうか」

「あ、そうですか、で、こちら方面とおっしゃいますとどちらで?」

「火曜日か木曜日ですが、いかがでしょうか」

「ちょっと待って、こちら方面とおっしゃいましたが、どちらのことを言っているのですか」

「赤坂ですが・・」

「そうですか、面白いですね、赤坂は広いですが、赤坂のどのあたりでしょうか?」

「火曜日か木曜日ですが、いかがでしょうか」

これは海外向け投資についてのセールスの電話でした。目的は私が苦労して稼いだお金をその会社の投資商品に出資させようとするものです。

ところで、この会話は上に書いた以上にはるかに長く続き、実際にこんなことがありうるのかと思うほどバカバカしいものでした。実際に、先方が話していることが正しいなどとは少しも信じられませんでした。はじめにこちら方面へ出向いてくるので立ち寄れないかとの言い回しでしたが、そう言えばあまりぶしつけではなく、強引な営業が和らぐとでも思ったのでしょう。

しかしながら、話している内容が正しいのかを問い返すと、露骨で強引な営業が顔を出します。しつこく繰り返す「火曜日か木曜日」です。ここではっきり出た答えは、営業スキルと適切な訓練の欠如です。

相手には台本が準備されているのですが、私はその神聖なるテキストに背いて彼らが言っていることに挑戦してみたのです。私の地域にたまたま来る、その折にちょっと立ち寄る、などとは信じるはずがありません。あり得ないことだと思われたので彼らに問い返したのです。もし面談がしたいのなら、どうして、「お邪魔したいのですが、火曜日か木曜日どちらがご都合よろしいで​しょうか」と言わないのでしょうか。そうせずにうそ、怪しく聞こえる主張をしたのです。信頼性ほぼゼロと言っていいでしょう。

さて、このセールスは投資案件のオファーです。目で見ることはできないし、味もなければ、音もしない、触ることもできない、においもしない代物で、しかも、良いものかどうかは何年も経たなければ分からないのです。こういったタイプの営業においては信頼感の要素が極めて大きいのですが、明らかにうそと分かるやり方で営業を開始しているのです。

もっとプロらしくするにはどうすれば良かったのでしょうか。もともと私を知っておらず、おそらくどこかで住所・電話番号を探り出して、まずはリレーションから始めようとしたのでしょう。リレーションを始めるのであれば、まずは直ぐに、相手の気持ちを楽にさせて何らかの関係を築くように努める必要があります。

「ストーリー博士、まだお目にかかっておりませんし、以前にお話もしておりませんが、私の名前は太郎と申しまして、XYZ社のものでございます。弊社はストーリー博士のようなお力のあるお客様へ対して投資関連の分野でサービスを提供しているものでございます。少々お話させていただいてよろしいでしょうか?

ありがとうございます。

弊社はお客様のようなお忙しい管理職の方々に情報・業界見通し等のご提供、およびご資産の運用のお手伝いをさせていただいております。これまでお客様からはよく、日ごろ忙しくて自分の資産管理に十分な時間を割くことができなくなっていると伺っております。これまで、このようなご経験はございませんか。

貴方の状況に合うものがあるのかどうか、必ずしも定かではありませんが、弊社のエキスパートと短時間なりともお会いいただければ、少なくとも弊社がこれまで、貴方のような管理職の方向けに実行しておりますポートフォリオ・ストラクチャーの中で最も優れた成功事例のいくつかをご説明することはできます。魅力があると思っていただける投資商品をご検討いただくことは可能でしょうか」

上記の例にはいくつものポイントがあります。余裕があればお世辞を言い、話をする時間があるかを聞き、富裕者向けのアドバイスを行っている会社であると説明しています。また、多忙な管理職は時間がないので、自分の資産管理が思うようにうまく出来てないという問題点についても指摘しているのです。

私にそんな経験がありましたかと聞くことによって前向きな「はい」の返事を受け取るのに十分な時間枠設定をしています。私のニーズに合うものがあるかどうか定かではない、と言うことによってバランスの取れた、コンサルタント的な響きがあり、強引な営業にはなっていません。最適商品の説明についても適切で、初めに実施中のものについてのみ説明をすると言っているのです​。

私がアクションを起こす余裕があるかどうか尋ねることは、多くの時間の節約になります。富裕層は資産をキャッシュのままにしておくことはしません。お金を増やそうとし、投資をし、利用しようとしています。その結果、しばしば他の投資にすでに投資済みで​、追加の投資を行う余裕がないことが多いのです。資産管理の会社は、最近投資の回収手続きをしたとか、現金が手元で増えたとか、投資案件に回す流動性資金が増えたといった理由でまだ全資産のコミットを終えていない人を探しているのです。

これとは逆に、ここにあるのは火曜日・木曜日の選択を迫る強引な営業で、それも次の週にこちら方面へ出向くと言ううそで固められたものなのです。これでは、彼らが売ろうとしているものと、いかにしてそれを売るのかの整合性がまるでありません。私が相手した女性は、フィリピンの営業ボイラー室から電話してきている、「電話番犬」で、リス​トにある私のような多くの人たちに台本どおりに電話をかけるのを仕事としているのです。台本に書かれていないことを言われたので、彼女は行き場を失ってしまったのです。

我々はみな信頼に基づいて仕事をしています。従って、発言はずる賢くてはいけないし、お世辞に長けてもいけなく、二枚舌でもいけません。顧客にサービスを提供するにあたって、だましてこちらを向かせるのは決して勝利を導く手法とはいえません。上の例での会話は何が何でもアポイントをとると言うことでした。やり方が悪いのです。

会話のポイントは、信頼を築き相手の興味をひきつけることでなければなりません。彼らがしなければならないのは、私のような、顧客になりえない人を排除し、可能性のあるバイヤーのみを相手に話すことなのです。私は対象ではないのです。しかし、彼女の場合、台本がそこまで良くできてはおらず、知る由もなかったのです。皆さん自分のフィ​ナンシャル・アドバイザーが聡明であってほしいと願っているはずです。しかし、上で述べたような彼らが取っている行動は、私にしてみればいかに聡明でないかの明確な証明なのです。

今の時代では、ボイラー室から誘いをかけるような強引な営業は通用しません。顧客の関心事が最優先でなければなりません。この基本的なことを理解していない営業マンは長くはもたないでしょう。営業アプローチを再構築し、顧客の成功にフォーカスすれば、顧客への面談が叶い、営業も成立します。

 

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