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セールスを始めるタイミングを見極める

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製品やサービスのセールスを始めるのに適切なタイミングが良く分かっていない営業担当者が多いことに私はいつも驚かされます。このような人たちは営業電話の中で急いで商談を始めようと躍起になりがちです。日本では、セールス・トークに入る前にある程度の信頼関係を築くという考え​方がしっかりと定着しています。商談の始めでは世間話にほとんどの時間を割き、スムーズに本題に入るのです。西洋の営業担当者はみな「時は金なり」を重視し、すぐに本題に入ろうとしたがります。前置きは貴重な時間の無駄であると考えるのです
 
日本では長​期的な視野と取引関係が好まれます。「知らぬ仏より馴染みの鬼」の方がうんと好まれ、そのためたいてい毎年同じサプライヤーに発注が来るのです。トップや意思決定権を持つ役職の人が交代してサプライチェーンから外されることもありますが、多くの場合それはその人たち自身が以前の取引で使った「馴染みの鬼」のサプライヤ​ーがいるからです。
 
誰しも自分が好む人と取引したいと考えるのは万国共通です。時には嫌いな人と取引しなければならないことはありますが、それでもやはり自分が好む人との取引を好むものです。商談の初期の段階で、天気の話や、オフィスはどこにあるか、​日本にはどれぐらいいるのか、などといった信頼関係を築くための会話は、あなたが好ましい人物かどうかを見るためのものです。
 
信頼もまた重要であり、最初の商談は主にこの取引であなたやあなたの会社は買い手側にとって信頼できる相手かどうかを見極める​ことが目的となります。買い手は私たちの話を聞き、私たちの振る舞いを観察することで信頼度を測ろうとします。緊密な関係がすべてものを言う日本では、この要素はさらに重要です。日本の販売・流通網には多くの層があるため、この生態系のどこかで間違いや問題があると他の部分に悪影響を及ぼしかねません。買い手が最も避​けたいことは、自分がしたこと、またはしなかったことで自分自身がこの生態系から外されてしまうことです。
 
単刀直入に、すぐに商談に入ることで時間の節約になると思うかもしれませんが、日本では実際にはこれは時間の無駄なのです。その理由は、セールス​・プロセス全体がこの始めの段階ですでに脱線してしまっている可能性があるからです。
 
また、日本のセールスの細かさが分かっても、世間話が終わった途端すぐにセールス・ピッチを切り出してしまう人もいます。これは大きな間違いです。多弁な営業担当者な​んて聞こえはいいですが、買い手がためらっているのを論理とデータ攻めで何とかして打ち負かそうと、とにかく話しまくることだけが目的です。
 
この間違いは適合性の度合いにあります。集積されたデータ、説得力、明白な論理、熱意のある話し方はどれも、商​談が買い手のニーズと合っているときにだけ意味を成すのです。コツは、実際に何が買い手のニーズなのかを引き出すことです。相手が厳しい買い手の場合、用心深くて情報をほとんどくれないのに、こちらへの情報の要求が多いのでまるで悪夢のようです。日本語と併せ、曖昧さ、気まぐれさ、不透明さの面で日本人は飛び抜けてい​ます。
 
商談の場にいながら買い手のニーズが何なのかはっきり分からないということもあります。一切質問をせず、自分のセールス・ピッチをどんどん始めてしまうと、買い手のニーズは恐らくわからないでしょう。買い手が自分のニーズを最初の商談で赤の他人​と共有したいと思っていなかったら、せっかくのセールス・トークも安っぽいお茶を少し飲めた程度の成果しか得られないでしょう。
 
適合性とは、こちらが持っているものと相手が欲しているものがうまく一致しているかどうかということを意味します。それを理​解できるようにする方法は、セールス・トークをすることではなく、相手のことを理解できるようにしっかりと考えた質問をし、細心の注意を払って相手の答えを聞くことです。これは私には至って単純なことに聞こえますが、これができていない営業担当者が実に多くいるのです。
 
彼らは「話す」ことに熱心なあまり、それを「売る」方法だと勘違いしてしまいます。こちらが提案する解決案は、商談の中で顧客のニーズが把握できるまで提示してはなりません。そして、そこに到達するためには、話をするのはほとんど顧客でなくてはならないのです。先に述べたように、日本では買い手を相​手に早口でまくしたてて圧倒させようとするようなセールス戦法は無残にも失敗するでしょう。顧客がピンクの商品を欲しがっているのに、なぜ青色の話をしているのでしょう。ピンクの商品を持っていないのなら、そもそも商談をする意味がありませんよね?
 
根​拠はよく分かりませんが日本では商談はたいてい1時間で、世間話から始まり、本題に入り、相手に関心があるようであれば提案を行い、エレベーターに向かう途中でさらに世間話をするというのが通例です。時にはそれより長くなることもありますが、それは相手の関心があって、時間が許す場合のみで、ほとんどの場合1時間が目​安です。
 
賢い営業担当者であれば、日本では最初の商談でセールスが成立する可能性が比較的低いことが分かります。ですから、ここでは長期戦で臨み、結果をすぐに出そうと必死になる必要はないのです。日本では、提案を持って再度商談に訪れる許可をもらえ​れば大勝利です。顧客が求めているものをこちらが持っていないのなら、「本日はどうもお時間をありがとうございました。またの機会によろしくお願いいたします」と商談を終了するのが賢明です。丸い穴に四角の釘を打ち込もうとするかのように、強烈な個性で押してもここでは結果は出ません。顧客を打ち負かして買わせような​どとしてはなりません。この顧客は諦めて、買ってくれる別の顧客を探しましょう。世間話ではなく、居座って無理やり取引を成立させようとすることこそが時間の無駄なのです。
 
解決案を提示するときは、相手がピンクか青のどちらが欲しいのか分かるまで、資​料やサンプル、事例などを出すのは控えます。できればこのような資料は隣の椅子に隠して、相手から見られないようにします。顧客が必要としているものを聞き取った上で、必要なものだけを彼らに見せるのです。光沢のあるパンフレットや美しいサンプル、かっこいいプレゼンテーション・スライドを見せることにあなた自身はわ​くわくするかもしれませんが、ここで感心させなければならないのは顧客です。顧客を感心させる唯一の方法は、彼らが求めるものをこちらが示すことです。
 
急がず、ゆっくり時間をかけて信頼関係を築くことに集中してください。商談で時間が許す限り、顧客に​できるだけ彼らのビジネス、市場の現況、適切なタイミング、好み、悩み、経験、先入観など、たくさん話してもらいましょう。
 
セールス・トークを始めるのはこれらのことが把握できてからであって、その前ではないのです。
 
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