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賢いのに分かっていない人たち

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日本という国はとても面白いところです。非常にたくさんのものが近代的で、ハイテクであり、微妙さと洗練さを卓越しています。冷蔵庫は左右どちらからでも開き、お化けのように静かだし、掃除機は実に軽くて効率的、トイレは飛行機より多くの制御ボタンが付いているなんて当たり前のことです。そんな中で、ちょっ​と異質なことに出くわすと、違いを強く感じてしまいます。プレゼンテーション・スキルがその異質に感じることの1つです。
 
ある大企業から当社に対し、CEOが基調講演を行うので、そのコンサルティングとトレーニングをするように依頼が来ました。私たち​は前任のCEOが昨年行ったスピーチを見ました。スピーチに人間味を持たせようという努力は、前社長によって全て抹消され、ゆですぎたキャベツのように、消化しやすい反面、面白みがないものになっていました。活気も熱意も熱心さも興味も湧いてこない、つまらない話の連続でした。説明によると、聞き手はみな関連会社の社​長たちで、彼らが理解できるのは、ゆですぎたキャベツのごとくつまらない話であり、それ以外の話は過激すぎると見なされる、とのことでした。日本の金融の世界では、失敗してもあくまでもしきたりどおりであれば、許容されます。どうやらプレゼンテーションについても同様のようです。
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日本でのプレゼンテーションのコミュニケーション力と説得力に関して言えば、これこそが進歩の大きな壁となって立ちはだかっています。レベルがとても低いので、聞き手が期待するのはゆですぎたキャベツであって、自分たちが理解できないと、不満に感じてしまうのです。これではいくら賢い人た​ちであっても、失敗の渦に巻き込まれ、愚かな言動すらしてしまうでしょう。
 
素晴らしく革新的で教養のある科学者や起業家たちが、お粗末なプレゼンテーションをしているのを観ると、日本でのプレゼンテーション・スキルにおけるプロフェッショナル・ギャッ​プをまさに痛感します。この人は明らかにとても賢く、イノベーションにおいて日本では伝説的な存在となり、その分野の先駆者として確かに称賛に値する人でした。
 
内容は非常に素晴らしいのですが、話し方は非常にお粗末でした。お粗末であるがために、メッ​セージ全体が失われてしまっていました。馬鹿馬鹿しいほど簡単なたった1つのことをするだけで、もっともっと効果的になったのですが・・・。日本のプレゼンターの皆さん、1枚にすべてを詰め込み、たくさんの色を駆使して画面全体が叫んでいるような、悪夢のようなスライドを作らないでください。
 
この人のスライドも、彼が伝えようとしている重要なポイントからかいつまんだ大量のアイデアの寄せ集めでした。スライドは無料です。この頃では好きなだけの枚数を作れるのに、なぜ1つの画面にすべてを積み込もうとするのですか?彼も、すべてをいっぺんに見せているため、様々な​色を駆使して、サイケデリックな霧の中で観衆を導こうとしていました。これは悪くないアイデアで、次は自分もやってみるべきだなんて思ったりしていませんか?実際は、これでは聞き手にとって、画面上にあまりにも多くの視覚的要素があって吸収しきれないため、さらに悪くさせるだけです。どれもが互いに競合し、共食い状態​となっているのです。
 
彼はとても賢いのに、どうしてそんな単純なことが分からないのでしょう。問題は、日本では正しいやり方に対する認識がとても低いことにあります。模範となる人がほとんどいないため、ダメなプレゼンテーションの例を誰もが真似してい​るのです。これが業界の標準的なアプローチとなり、みんなが失敗しても、しきたりどおりに失敗するので、問題とならないのです。いえ、恐らく日本で日本人のみに対してプレゼンテーションするかぎりは問題ではないでしょう。
 
多くの場合、私たちは画面に頼​りすぎてしまいます。しかしながら、言いたいことを伝えるために、スライドを使って視覚的に示す必要があるのでしょうか。 時には1枚のスライドで十分です。スターバックス社CEOのハワード・シュルツ氏が、日本で講演するのを観たことがありますが、スライドは1枚で会社のロゴだけを載せたものでした。でもスピーチは大変充実した内容でした。私たちは彼が発する言葉に神経を集中しなくてはならなかったからです。確かに、内容が複雑な時には適切な順番で十分に用意されたスライドがあると、受け取る情報が整理され、明確になり分かりやすくなります。
 
スライドを使う​のなら、鉄則は1枚のスライドには1つのアイデアのみを入れるということです。とても単純なことではありませんか。多数のスライドを使ってはいけないということではありません。2、3秒おきにスライドをクリックしていくと、実際には30分間のスピーチで大量のスライドを見せることになります。スライドの数とスピーチの​長さには相関性はありません。たいてい、あなたの目的次第なのです。
 
もし、会社やビジネスのイメージを強調する、またはストーリーを視覚的に伝えたいのであれば、2秒おきぐらいに異なるスライドを見せるのも適切でしょう。内容について詳しく話したいの​であれば、スライドはほとんど使わない方が良いでしょう。数を制限することで、聞き手に覚えてもらいたい特定のアイデアに聞き手の関心を集中させることができます。
 
1枚のスライドに1つのアイデアのみ、とすることで、たくさんの色を詰め込んだ「サイケ​デリック・スライド」を作らないで済みます。時には、画面に1つの画像を見せて、自分が話そうとする内容の背景として使用すると効果があります。たとえば、画像と1つの言葉のみを示して、その言葉と画像について詳しく話すのです。私はこの手法が使われているプレゼンテーションを最近観ました。長年観てきた中で最高のプ​レゼンテーションの1つだったと思います。内容は複雑で、論点も気が遠くなるほどスケールが大きかったのですが、プレゼンテーションは素晴らしいものでした。シンプルな画像と1つの言葉から、私たちはすぐさまその視覚的なポイントを理解でき、複雑なメッセージに含まれているアイデアを受け入れることができました。
 
日本の賢い皆さん、これからはプレゼンテーションをする時に無駄で愚かなことをするのはどうかお止めください。
 
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著者について
グレッグ・ストーリー博士(​Dr. Greg Story):デール・カーネギー・トレーニング・ジャパン、代表取締役社長
グレッグ・ストーリー博士は、これまでのキャリアの過程で、学問、コンサルティング、投資、通商代表、国際外交、リテール・バンキング、人材開発など様々な業界において、卓越した知識と技能を培ってきました。オーストラリアのブリスベンで育った彼は、国際政治学において博士号を取り、活躍の場を日本に移した後も30年もの間、リーダーとしての責務を担ってきました。
 
未来のリーダーに欠かせない4つの分野:リーダーシップ、コミュニケーション、​セールス、プレゼンテーションにおいて、在日米国・英国・欧州商工会議所発行の月刊誌「The Journal」、「ACUMEN」、「EURO BIZ JAPAN」に記事を寄稿し、ビデオや「THE Leadership Japan Series」、「THE Sales Japan series」、「THE Presentations Japan Series」などのポッドキャストのコンテンツを多数発表するなど、生涯学習者として活動をしているソートリーダーでもあります。さらに、彼は人気のある基調講演者であり、エグゼクティブ・コーチであり、講師です。
 
1971年に糸東流空手に入門、現在空手道六段の彼は、「文武両道」を真言として、武道哲学や戦略をビジネスの課題に活かしています。
 
 
 
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