プレゼンテーション

心を動かすファシリテーション

ソート・リーダーシップ・シリーズ ビジネス達人 #21 (プレゼンテーション)

先日のオンラインのセッション中での出来事です。とてもセッションにポジティブに参加して下さっている方がいらっしゃいました。その方はセッションの最初には、自らが真っ先に挙手をして発言をし、他の方もポジティブに発言できる環境を作って下さいました。そして、その後は、その方が自ら発言するだけではなく「Tさんがさっきおっしゃっていたことが素晴らしかったので、Tさんのお話を全体で共有してほしい!」と他の参加者の方に勇気を与えて発言をするように促していました。別のディスカッションでも、少し沈黙が続いて皆様が発言を躊躇しているときには、画面越しに「どうぞ!!ぜひ発言してください!」と皆さんにポジティブに発言を促すジェスチャーをされていらっしゃいました。そして、他の参加者の方が発言しているときは笑顔でうなずきながら、聴いていたのです。発表をしてくれている方のみならず、セッションに参加している我々全員、そしてファシリテーションをしている私にまでも勇気を与える素晴らしいパワーをお持ちの方でした。ファシリテーションのプロとはこのような方だと思えるお手本のような方でした。その方は、やはり、某有名コンサルティングファームの要職に就かれていらっしゃる方とのこと、まさに!話させ上手な方だと感動しました。

 

皆さまも、ミーティングなど様々な場面でファシリテーションをされる機会があるのではないでしょうか。ファシリテーターのトレーニングを受けたことがある方はあまり多くはないようで、効果的なファシリテーションの方法についてのご質問をよくいただきます。

 

デール・カーネギーの原則はオンラインでもオフラインでも、ファシリテーションの場において非常に有効です。ファシリテーターとして、最も重要な事は、話し上手である以上に「良い聴き手になる。」ということです。極端な事を言えば、話が上手である必要は全くないのです。ファシリテーターは、自分にスポットライトを当てるのではなく、できるだけ多くの方々にスポットライトが当たるように心がける事が重要です。そのためには「話すモード」をオフにして、他者に関心を寄せ「聴くモード」になることが求められるのです。簡単に聞こえるかもしれませんが、実践することは非常に難しいと実感されると思います。

 

実際に多くの方々から、このような声をよく聞きます。「ファシリテーション中に誰かが何かを言ったら、自分も何か賢いことを言おうと頭の中に火が点いてしまうんです・・・。」リーダーは、チームメンバーよりも、早くインスピレーションが湧いてしまう傾向にありますので、すぐに結果や結論が見えてしまい、自分の意見に集中してしまう可能性もあるのかもしれません。その結果、参加者の声を聴く事を忘れてしまう。または、そこまで極端でなくても、聞きたいことだけを限定的に聞くようになり、聴いた話の中から「自分が気に入った点だけを受け入れてしまう」という事があるのもしれません。ファシリテーションにおいても、傾聴に注力し、他の誰かが話をしているときは文字通り、耳だけではなく10の目と心で聴く事ができたらそれだけでも素晴らしいと思います。無意識に話し手が話し終わる前に話を遮っていることがないか、意図的に自分の普段の行動に注意をしてみると自分を客観視できて、良い気づきが得られるかもしれません。トーマス・カーライルも「雄弁は銀、沈黙は金」と言っています。即ち、話し上手よりも良い聴き手になることが非常に効果的という事なのです。
 
時にファシリテーターにとっては、沈黙を恐怖に感じることもあるでしょう。ご安心ください!沈黙に恐怖を感じる方、お気持ちわかります。日本にも「沈黙は金なり」という言葉があります。ぜひ、沈黙を恐れず、歓迎してみましょう。質問をしたら、その後は参加している方が積極的に発言をしてくれることを信頼をして待ちます。中には恥ずかしくて発言できないという方もいれば、何層にもなる深い考えを整理するために時間を要している方もいるでしょう。彼らに貢献する機会を差し上げるために、沈黙を愛し、良い聴き手になるのです。「皆様の意見は等しく重要で、どんな意見でも価値がある」という空気感が作れるように尽力するのです。

 

一生懸命に発言して下さった方の、コメントを言い換えたり繰り返しをしたりなどのパラフレーズ、リフレーズすることについて、「話を聴いていましたよ。」というメッセージを発信する意味で効果的と言われることもありますが、デール・カーネギーの原則の「相手の意見に敬意を表する」という見地からは、なるべく誰かの発言をパラフレーズしたりリフレーズすることを控えるという事が効果的であると考えられています。パラフレーズ、リフレーズをしないことは逆に発言した方に自分の存在が歓迎されているのだという気持ちになっていただけるという見方もあるのです。意見を聞いていましたよ。という事は「意見を言ってくださり、ありがとうございます」「リスクをとって発言して下さり素晴らしいですね」と感謝や賞賛をすることでしっかり伝えます。私達も、グローバルのマスタートレーナーからは、発言者の意見をパラフレーズやリフレーズをすることで、発言された方が自分の表現力やコミュニケーション力が不足していると指摘されたと受け止めないように、気を配る必要があります。と言われました。一生懸命発言してくれた方が自分の意見が修正されたと思わせてしまった時点で、安心安全な環境ではなくなってしまい、無意識レベルでメンバーが自発的に発言したいという気持ちが削がれてしまう可能性があるのです。

 

ミーティングの規模にもよりますが、できる限り全員が発言できるように促しましょう。時間が許す限り皆が発言するまで待ちましょう。恥ずかしがり屋の方もいれば、じっくりと深く考える方もいます。彼らが慎重に考えをまとめて、さぁ発言しよう!としたその瞬間に、議題を変えてしまったら・・・「あ、良かった!」と安堵する方もいらっしゃるかもしれませんが、彼らが「自分は話さなくてもこの会議は進行されるものである。」と思ってしまいます。その積み重ねが、少なからず参加者のエンゲージメントレベル影響してしまうのです。

 

クローズエンド型の質問で確認を促し、オープンエンド型の質問でディスカッションを促すよう、これらの質問を意識的に使い分ける事も有効です。また、自分の意見を盛り込まず、第三者の意見を用いて尋ねるのも良い方法です。例えば、「一部のコメンテーターたちは、来年は新規プロジェクトを立ち上げるのに最も良い時期だと言っています。この点に関し、皆さんは実際に現場にいてどんな印象を持っていますか?」というように印象をお聴きするのです。その問いに自分自身の考えを関連付けない事で、参加されている方々は本当に思っている事が発言しやすくなるのです。

 

また、事実ベースの質問は情報やデータを得るためで、一般的に、正解不正解があるこのタイプの質問は、誰かを指名して、その方が答えられなかったら恥をかかせてしまうことになってしまいます。皆様の「顔を立てる」ために個人に対してよりもグループ全体に尋ねる方がよいでしょう。一方、意見ベースの質問は、ある議題について参加者の方々がどのように感じているかを把握するために役立ちます。活発なディスカッションを促すために、議題によっては、少人数のグループでディスカッションの機会を提供してから代表者の方にグループ全体の意見としてどのような事が話し合われたのかを共有していただくという事も有効です。また、ご自身の考えを紙に書いてもらったうえで、その後「紙にどんなことを書いたのですか?」と聞くと、参加者の方々は活発に発言するようになります。

 

「笑顔」で聴く事もとても大切です。安心安全な環境でこそ、イノベーティブなアイディアが浮かぶことも忘れずにいましょう。私達が本当に参加者に誠実な関心を寄せているかどうかは皆に伝わるのです。最初はぎこちない笑顔でも、相手や、場を和ませたいから作っている思いやりが伝わる笑顔であれば、感動をもたらすと信じます。
 
私たちはファシリテーターとして、ディスカッションに参加される方々に積極的に参加していただき、貢献してもらいたいのです。そして、参加者にその考えを自分のものと思ってもらい、ミーティングに参加した時間が有益だったと思ってもらいたいのです。

 
デール・カーネギーの原則を随所に散りばめる事によって、素晴らしいファシリテーションが、オンラインでもオフラインでも可能になります。真のリーダーとしての信頼と尊敬を得る事ができます。さらには最大のアウトプットができるようになっていくと実感できる事でしょう。

 

そう、心を動かすファシリテーションとは!参加されている方々がポジティブに影響を与えあい、1+1は2以上の相乗効果が生まれる、そんなアウトプットを創り出せるファシリテーションなのです!

 

Dr. Greg Story

President of Dale Carnegie Tokyo Japan

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