残念ながら、誰しもが我々のように素敵で、かわいらしく、楽しく、そして魅力的というわけではありません。我々が完璧な人間のお手本になろうと一生懸命努めても結局何人かの人が扱いの難しい人として居残ります。下記に、難しい人と折衝するときに有効な12のヒントを示しましょう。
1.前向きな態度をとる
母親のお説教のようですが、折衝の過程を実人生における経験を積む場として捉え、ウィンウィンになれる折衝スキルを高める手段として考えれば、話し合いを始める段階で有利に運ぶことができます。
2.共通の場所で会う
長文のメールのやり取りや複雑な問題を電話で話し合うよりは直接面談するようにしましょう。顔を合わせるのが最善でむしろ両者にとって中立的な状況であろうと思われます。お茶とか昼食とかをとりながら職場から離れて会うのがベストでしょう。
3.論点を整理する
同じ問題点にも係わらず異なった議論をしていることが時折あります。共通に理解している言葉で論点を定義づけることにより、回り道のように見えても何が課題なのかがより明快になります。もしも論点が大きすぎる場合は、一つ一つ具体的に処理できるよう細分化しましょう。
4.事前に準備する
相手の立場に立って向こう側の観点から議論を積み上げて見ましょう。そうするとこちら側が必ずしもしっかりとした根拠もなく描いていた情報や前提条件にずれがあることが判明することがよくあります。何がBATNA(交渉が決裂したときの対処策として用意しておく最も良い代替案:交渉学で使う言葉)なのかを決めておきましょう。また、何が受け入れ可能か、何を我慢できるか、何が理想的な決着かを決めておきましょう。
5.正直に手持ちのこまを確認する
自分自身の個性・スタイルをよりよく認識しておくことが大切です。その個性は折衝を進めるのに役立つかもしれないし妨げになるのかもしれません。スイッチを押されるとたちまち暴発してしまう「危険なボタン」を想定し、そんな反応が起こらないように自分を抑える心構えをしておきましょう。言葉遣いや言葉の調子にも気をつけましょう。いったん使い始めるとそれが折衝するときの標準になってしまい、望んでいない方向へ行ってしまうことがあります。
6.共通した関心点を探る
諍いをすると相違点が強調され共通点が極小化する方向へ向かってしまいます。共通の目標や望ましい結果を探りましょう。共通の目標があるかもしれないのに、そこに到達する最善の道の周辺にはしばしば意見の不一致が横たわっています。共通の目標、望ましい未来に焦点を当てて議論し、対話を前に進めましょう。
7.情緒に流されず事実に基づいて対処する
スポーツの世界では敵方と対戦するとは言わず野球をプレイすると言いますね。焦点を当てるべきなのは課題の内容そのものであるべきで、決してそれを持ち出してきた相手方ではありません。特に自尊心が入り込んでくるような場合、目標をひたむきに目指す合理的なアプローチを保つのは難しいかもしれませんが、争いを個人的な問題としては捉えず、課題を個人的な係わりから切り離しておきましょう。防衛的な姿勢ではなくて、内容を明らかにすべく質問をして先方に話をさせ、こちらは聞くほうに回りましょう。
8.正直であること
あなたにとって何が重要なのか、そしてそれはなぜかについて正直に説明し、透明性を保ちましょう。明快にこちらの目標、課題および目的を伝え、相手方がこちらの立場を把握できるようにしましょう。そんなことは明快だなどとは思わないでください。おそらくそうではないのです。常識と思われているものが本当に共通の認識であれば良いのですが、そうはいかないのです。
9.代替案を根拠とともに示す
妥協する意思があることを示すためにも、オプション案、代替案を作りましょう。相手方の関心事を考慮してオプション案の枠組みを作りその計画を裏付ける根拠を固めましょう。
10.熟達した対話者になる
繰り返して言います。明瞭に。明瞭に。疑問点を質問しましょう。理解のために言い換えてみましょう。そしてこちらの言っていることを理解しているのかを常に確認しましょう。ミスコミュニケーションは多くの場合争いごとの主要な元凶となります。
11.よい結果で終わる
交渉がまとまったら、次に行動計画の取りまとめ、誰が何に責任を負うのか、いつ、どのように等々について合意しましょう。
12.折衝の過程を楽しむ
折衝の都度、反省しそこから学習しましょう。自らの基準を設けて折衝過程および解決策を評価し、将来の参考に記録として残しておきましょう。異なる観点からの理解や学習による助けを得ながら、自分がどれだけ成長したのかを観察しましょう。
狡猾な個性のある人や難しい人は都合よく消え去るなどということはあり得ません。反対に、そういった人たちにうまく対処するよう準備をしておいたほうが良いでしょう。我々は同じやり方を繰り返しがちで、なぜより良い結果を出せないのだろうか、やり方を変えられないものだろうかと考えます。ちょっと話が変わりますが、アインシュタインは狂気であることの定義として、「同じことを何度も繰り返し、違う結果が出るものと期待すること」と言っています。狂気になってはいけません。ここにあげた実用的な秘訣はよりストレスが少なく、将来的により成果の上がる道筋を進むのに手助けになるものです。
実行ステップ
1. 前向きな態度をとる
2. 共通の場所で会う
3. 論点を整理する
4. 事前に準備する
5. 正直に手持ちのこまを確認する
6. 共通した関心点を探る
7. 情緒に流されず事実に基づいて対処する
8. 正直であること
9. 代替案を根拠とともに示す
10. 熟達した対話者になる
11. よい結果で終わる
12. 折衝の過程を楽しむ