セールス

理想的なクライアントを見極めるには

ソート・リーダーシップ・シリーズ ビジネスプロ #21 (セールス)

我々にとって、理想的なクライアントとはどのような方でしょうか。具体的なイメージや、その方とどのように信頼を構築していくかなど頭に浮かびますでしょうか。具体的なイメージを持つことが、セールスの成功にどれだけ大きな影響をもたらすのか。早速見ていきましょう。

 

物書きの方を例にとってみましょう。先生と呼ばれる『売れっ子』の物書きの方々は、読み手のイメージを鮮明に設定し、その方に刺さる伝え方や表現方法を使われる方が多いようです。その為に『コア』なファンがついたり、逆にこの設定イメージに合っていない読み手にとってはそこまで刺さらない、なんて差がでてくると言われています。この先生の本は心にぐっと刺さる。概要はさておきとりあえず読む!なんて話、聞かれたことや体験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。あなただから、あなたを信じて、この書き手と読み手の関係は、我々が我々のクライアントと築きたい関係性にもつながります。馬が合い、共通の関心ごとや言語を持ち、お互いにとって実りのある会話のやり取りができるような波長のあう方に出会うには、まずは『自分自身の価値観』を把握する必要があります。単発的な短期セールスに価値がないというつもりは全くありませんが、安定的な再発注を受けられる長期での関係性を作ることが出来れば、我々とクライアントの両側にとって安定的な目標達成や効率的なタイムマネジメントにつながります。その為には、相互の信頼は欠かすことが出来せません。そのカギとなるのが価値観の共感なのです。他にどのような要因が信頼構築に影響を与えるでしょうか。1度目の商談から相手が理想のクライアントとなるケースはゼロではありませんが、かなり稀です。特に日本ではリスクマネジメントに重きを置きますので、「試して、しばらく様子を見る」のやり方が主流です。最初の注文、その後の互いのやり取りを通して、クライアント側は我々が信頼における相手かどうかを確認しようとするのです。

 

これは『ビジネスを守る』ための防衛反応のようなものですから、義理や人情の影響も相まって、既に他社と長期的なビジネス関係が出来上がっているクライアント、新規のサプライヤーとして売り込みをする場合、よほどの差がない限り門前払いをされます。『ある程度上手くいっているわけだし、新規で不慣れや不具合のリスクがある新規商品になぜ変えないといけないのだ』と乗り換えに極めて消極的な姿勢を示されるでしょう。ここではっきりとさせていただくのは、信頼を作り上げるには時間という要素が大きな影響を持つということです。では、その時間をかけるべき相手の見極めはどのようにすべきでしょうか。

 

どのクライアントが初期段階において時間をかけるべき理想の相手なのか、相手は利己的でなく長期関係を見据えたお互いの将来性を大切にされる方なのか、その見極めをする間もなく、最初の商談を成立させるために価格交渉を含め融通を利かせようとされる方が多くいらっしゃいます。決して間違いではございません。ここで注意すべきは『BANTA』という考え方を念頭に置き、いつでも使うのだという『心の準備』が出来ていることです。 BATNAとは、「合意済み契約に対する最善代替案(best alternative to a negotiated agreement)」を指していまして、この考え方は『両者にとって最善案でない場合、こちらが取引から離脱する』というものです。例えば、商品価値に見合わない法外な値下げ要求を押し付けられる合には、我々としてはこの新規クライアントと、果たして尊敬と信頼をお互いにもつ長期的なビジネスパートナーになれるのか、そのラインを下回ってしまうポイントはどこなのか、これを考えておく必要があるのです。事実、こういったクライアントは、商品の内容や費用対効果よりも『コストに』注意の比率が傾いているので、価格競争に陥れば、時間をかけて作り上げた関係性には目もくれず、コスト理由だけでやすやすと他社に乗り換える、というケースが多く見受けられます。

 

買い手が『新規顧客のカード』を利用してできるだけきつめに要求をしてくるというケースは時々あります。こちらがどれほど譲歩できるのかを見極めようとするわけです。一度このライン引きがされると、初回なので一度切りの特別契約ですよ!次回からは正規で!と決めたにもかかわらず、先方はこれを基準ラインとセットし、2回目の契約でも『いやぁ交渉はしたんですが、前回がこのお値段だったので同じ金額しか確保できなかったんですよねぇ』と以降の契約が全て特別価格になるというケースも多々おきます。ここにお互いに対する尊敬や信頼はあるのでしょうか。

 

我々自身、誰とパートナーとなりたいと望んでいるのか、この相手はパートナーになりうる適合性はあるのか、この基準を明快に持っている必要があります。必ずしもすべての顧客が我々の想いに報いてくれるわけではありません。売り手は焦りがあるとバイアスをかけ、どれだけ優位性やマウントが取れるかを仕掛けてくる方もいます。従って、このクライアントとどんな関係が構築できるのか、ご自身の価値観に応じて見極め、ひとたび長期間にわたって取引を継続したいと思う相手であると見極められれば、じっくり時間をかけて信頼関係を構築するということを心がけましょう。

 

Dr. Greg Story

President of Dale Carnegie Tokyo Japan

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