プレゼンテーション

ニホンノミナサマ、モウシワケゴザイマセン

ソート・リーダーシップ・シリーズ ビジネス達人 #6 (プレゼンテーション)

「本日は、僭越ながら私のような若輩者がこのような高い席からお話させていただくことをお許しください。」「今日は皆さまのお役に立てるお話ができるかどうか心配で、とても緊張をしています。どうぞお手柔らかに宜しくお願いします。」

 

これは、よく日本で聞く一般的なスピーチの出だしです。とても謙虚で、礼儀正しいと思います。どうして日本人のスピーカーたちはこんなに謝罪しなくてはならないのでしょうか?日本人は謙虚さを尊ぶため、正直であることを公に表明することが求められるということもあると思います。「出る杭は打たれる」、「能ある鷹は爪を隠す」という言葉が示すように、他人の前で自信がありすぎるように見えないほうが好まれるという背景もあるかもしれません。文化の違いはあるにせよ、デール・カーネギーは100年前から「スピーチはお詫びの言葉で始めてはいけない」と言っています。聴き手に自分が話す資格がないことや、自信がないこと、準備不足であること、緊張していることを伝え、はじめから聴き手をがっかりさせる必要はないのです。彼は「あなたが敢えて言わなければ、聴き手はあなたの準備不足に気が付かないかもしれません。」とも言っています。今のボーダレスの時代、グローバルレベルのプレゼンターになるには、「私は、このお話をするにふさわしい経験と知識があります!このお話を聴いていただいて幸せです!このような機会を頂けて嬉しいです!」と言わんばかりに会場のエネルギーを高くし、話し手も聴き手もワクワク幸せにさせるプレゼンターになる方が増えると嬉しいと思います。

 

日本のパブリック・スピーキングの歴史は比較的浅く、明治時代に福沢諭吉が演説の習慣を作ったことから始まります。大名たちが、苦労して生活している一般大衆に向かって、口頭で伝令を出すようなことはありませんでした。民衆に何か知らせるときは、御触を書いた札が立てられました。一方、西洋文明では古代より、人前で長い話をしたりする文化があり、それが技量と知性の証であるという考え方が受け入れられてきました。日本では話し言葉の威力がまだ完全には受け入れられていないため、その価値は、海外程は認められていないようです。「皆さまがお手本にするプレゼンターはどのような方でしょうか。具体的な人物を思い浮かべても良いです。」このような質問をすると、海外の方の名前が挙がることが多いです。日本では、文化背景的な観点からも、パブリックスピーキングのスキル向上の重要性が世界と比較すると低いのかもしれません。

 

また、日本人のスピーカーが、外国人を相手に英語でスピーチをする場合はどうしたらよいでしょう?
多くの場合、聴き手は、細かい内容よりもスピーカーのことを覚えているようです。彼らが会場を去る時に持ち帰るのは、スピーカーに対するポジティブもしくはネガティブの、どちらかの印象ということになります。いずれの場合でも、言語的な純度の高さはあまり求められません。外国人は、ネイティブ・スピーカーでない人のきついアクセントや、文法上の間違い、異国的で変わった用語を使ったりしたプレゼンテーションを聴くのに慣れています。

 

逆に、外国人が日本語でスピーチをしたときのことを考えてみるとわかりますね。外国人の方が日本語でスピーチをしたとしたら拍手喝采ですよね。一生懸命、最善を尽くしている姿を見て、聴き手はスピーカーを応援したいという気持ちになり、話し手、聴き手のエンゲージメントすら上げることになります。つまり、ポジティブな印象が残るのです。

 

加えて、聞き手がどんな人たちか見てみましょう。対象がビジネス・パーソン向けであれば、その方々が日本ファンで、日本のことをサポートしてくれる人たちである可能性もあります。その中で多くの方が2か国語以上話せる可能性もありますので、外国語でプレゼンテーションをすることに関するいろいろ複雑な事情をすべて理解してくれている事でしょう。また、幼少からプレゼンテーションをすることを常としてきた人たちですから、優れたスピーカーのことを称賛してくれるでしょう。聴き手を信頼する事もとても大切です。さあ、これからのプレゼンテーションは聴き手に感謝をして、「お詫びの言葉ではじめない。」を実践してみましょう!ぜひ、聴き手の心をつかむインパクトの強い言葉で始めてみましょう。そして、プレゼンテーションの最後まで、聴き手をエンゲージさせるように試みましょう!

 

今日、どんなに魅力的なスピーカーでも、プレゼンテーションの最中に、聞き手の手の中にあるモバイルデバイスで会場の外の世界とこっそり繋がることを避けることは難しいようです。
そして、グローバルのプレゼンテーターとして大切なことをもう一つ。これも我々の手の中のモバイルデバイス同様、デール・カーネギーの時代には想定されなかった事だと思います。何でしょうか。プレゼンテーションで使うスライドです。対面でもオンラインでもスライドを使ったプレゼンテーションをする前にはリハーサルをして、トピックについて自分の言葉で話せるようにしましょう。スライドの進行係がいたら、事前にその人と練習しておき、タイミングをあわせてスライドを表示できるように準備します。

 

そして、スピーチの終わらせ方でも差をつけます。ここまでお聴きいただいた皆様は「では、時間が来たようなので終わります。ありがとうございました。」というスピーチの終わらせ方をすることはもうありません!熱のこもったクロージングを用意します。しかも、2つです。質疑応答に入る前と、質疑応答の後の最後のクロージング用ということになります。クロージングでは、聴き手の皆さまに私たちのアイディアを支持していただき、行動を促すような終わり方にするようにしてみてほしいのです。ご存じのとおり、質疑応答で、聞き手からの質問はプレゼンテーションのトピックとは無関係だったり、反対意見だったりすることもあります。そこで、質疑応答の後の最後のクロージングでしっかりとス ピーチに聴き手の関心を戻し、メッセ ージを伝え、会場のエネルギーレベルを上げるようにします。聴き手が会場を出た後も、彼らの心に残る大切なメッセージをもう1度お伝えするのです。

 

常に最もパワフルなコミュニケーションとなるように志を高く持ちましょう!公の場で話すときは、いつも自分自身のブランドと、組織のブランドを代表しているので、私達一人一人の言動がとても重要になってまいります。また、日本のグローバル化をさらに進めていく上でのお手本となりましょう。日本に好印象を持っていただき、日本と世界をもっと近づけるように貢献していきましょう。私達の小さな心がけが、その先にビジネスの発展も幸せも手にできると信じています。私達一人一人の行動を変えることにより、聴き手の心を動かし、世界が繋がる一旦を担うのです!

 

Dr. Greg Story

President of Dale Carnegie Tokyo Japan

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