#106:心理的安全を築くリーダーに変わる方法
ビジネス達人の教え
クライアントの方々とお話ししていると、特に経営者や人事の方から、こんなご相談をよくいただきます。
「あるリーダーが高圧的で、その人がいるとメンバーが発言や挑戦ができないんです。本人にも伝えたけど、改善が見られなくて…」
ああ、そういうリーダー、うちの組織にも思い当たるかも。そう感じた方もいらっしゃるかもしれません。
なぜそのリーダーは、無意識に、あるいは時に意図的に、周囲の声を封じてしまうのでしょうか?
そして、それを変えていく方法は本当にあるのでしょうか?
私はこのようなご相談を受けるたびに、「リーダーの方含め、誰もが安心して、そして自分らしく意見や想いを共有できる環境」を創るお手伝いができたらなと思います。
多くの方が「心理的安全性が大切」ということは頭では理解しています。
でも、それを実際の行動にどう落とし込めばいいのか。
その答えを探して、私たちは迷い続けているのではないでしょうか。
そこで今回は、信頼と心理的安全性を育むための4つの習慣をご紹介します。
これらは、デール・カーネギーの時代を超えた原則にも通じる、リーダーの「あり方」に深く関わるものです。
信頼と心理的安全性を育む4つの習慣を見てまいりましょう。
1. 批判、非難もしない。不平も言わない。
人は、指摘されると無意識に自分を守ろうとし、反発するものです。
だからこそ、誰かのミスを見つけたときは、「人」ではなく「課題・改善」に意識を向けることが大切です。たとえば、「なんでそんなことをしたの?」ではなく、
「今後、同じことを防ぐには、どこを見直したらよさそうかな?」と問いかけてみる。
こうした言葉の選び方ひとつで、空気は大きく変わります。
相手を尊重しながら本質に向き合う。それが、信頼を損なわずに課題を解決するリーダーの姿勢です。
2. 誠実な関心を寄せる。
時に、あるメンバーの態度や反応に「なぜ?」と感じる場面は少なくありません。
ただ、その言動の裏には、本人なりの価値観や事情、これまでの経験があるのかもしれません。
たとえば、過去に厳しく責められる経験があると、先手を打つような強い言い方や行動になってしまうこともあるのです。
そうした背景に思いを馳せ、安易にジャッジせず、まずは関心を持って接してみる。
それだけで、相手の心の扉が少し開くことがあります。
そして、メンバーもまた、「このリーダーは自分を理解しようとしてくれている」と感じたとき、力を抜いて挑戦できるようになるのです。
自分をわかろうとしてくれる人のためなら、がんばろうと思える――
そんな関係性こそが、心理的安全の礎になります。
3. 相手にその考えを自分のものと思わせる。
人は「言われたからやる」より、「自分で気づいたからやる」の方が圧倒的に行動に移しやすいものです。
もちろん、指示命令が必要な場面もあります。
ただ、それだけでは、受け身の姿勢を生み、内発的なやる気を損なうこともあります。
そこで有効なのが「問いかけによる対話」です。
「どうすれば○○ができると思いますか?」と尋ねてみてください。
問いによって生まれた“気づき”こそが、本人の納得を生み、自発的な行動を促します。
4. ほんの僅かな改善でも、心から、惜しみなく褒める。
感謝や承認の言葉は、できるだけ具体的に、誠実に伝えましょう。
「ありがとう」「助かっています」も嬉しいですが、
「会議で○○さんの視点を加えてくれてありがとう。あのひと言で皆の視野が広がったと思う」と伝えられたら、どう感じるでしょうか?
行動の価値が伝わると、人は自信を持ち、次も貢献しようという意欲が湧いてきます。
たとえまだ期待に届いていなくても、改善が見られた部分に光を当てることが、さらなる前進の力になります。
リーダーシップは、日々の言動という「習慣」の積み重ねで育まれます。
だからこそ、「意図して自分の行動を選択する」ことが、リーダーとしての変化を生み出すのです。
ただ、ここで気をつけていただきたいのは、
「褒めていればいい」「すべてを受け入れればいい」「部下の仕事を引き取ればいい」ということではないのです。
リーダーが無理をして全てを背負って疲弊してしまっては、結果的に組織全体が停滞します。
信頼とは、甘やかすことでも、遠慮することでもありません。
挑戦するチームをつくるために、適切な対話と境界を持ちながら、関係性の質を育てていくことが求められます。
リーダーの皆さん、一人ひとりが、自分らしく意見や想いを分かち合える職場を創っていきましょう。そうすれば、リーダー自身にも心理的安全が担保され好循環が生まれます。