「人と話すのが好きだから営業に向いている」は危険な考え
はじめに
「人と話すのが好きなので、営業に転職したいです。」
——部下からそう言われたとき、マネジャーにとっては恐ろしい瞬間です。
確かに営業には人と関わる力が必要です。しかし営業とは「話すこと」ではなく、「聞くこと」「質問すること」「理解すること」です。
日本では慢性的な営業人材不足のため、誰でも簡単に営業職に就ける時代ですが、それで成果が出るとは限りません。
「人が好き」だけでは営業は務まらない
人が好きなのは良いことです。しかし「相手を動かす力」と「話すのが好き」はまったく別のスキルです。
営業には、「何を」「どう」「いつ」話すか、そして「いつ黙るか」という判断力が求められます。
話すのが好きな人ほど、つい話しすぎてしまう傾向があります。熱意や信念が強いのは良いことですが、それが「相手の話を聞かない営業」になってしまえば逆効果です。
ミニサマリー:
「話す力」は関係を築く、「聞く力」はビジネスを築く。
話しすぎる営業が失敗する理由
営業が一方的に話すと、自分の知っている情報しか残りません。
しかし相手の課題や本音は、聞くことでしか得られません。
日本では特に、顧客が「ピッチしてもらう」ことを期待しています。
彼らはそれを分析し、低リスクな選択肢かどうかを見極めようとします。
だからこそ、最初にすべきは「質問の許可を得ること」です。
それを怠ると、話し好きの営業ほど“空回り”してしまいます。
ミニサマリー:
日本では「話す前に許可を取る」ことで信頼が生まれる。
営業の核心を突く2つの質問
許可を得たら、次の2つの質問から始めましょう。
-
「現在の状況はどのようなものですか?」
-
「理想の状態はどのようなものですか?」
この2つの質問で、相手の課題意識と緊急度が見えてきます。
もし自分たちだけで解決できると思っているなら、あなたの出番はありません。
しかしできない場合には、こう聞いてみましょう。
「理想の状態が明確なのに、なぜまだそこに到達できていないのですか?」
この質問こそが、あなたが存在する理由を明らかにします。
ミニサマリー:
「今どこにいるか」「どこへ行きたいか」「なぜ行けていないのか」が営業の羅針盤。
「話しすぎ」で商談を壊さない
顧客が「わかりました」「お願いしたいです」と言った瞬間、営業は話を止めるべきです。
すぐに納期・導入・次の手続きなど、実行フェーズへ移りましょう。
ここでさらに「売り込み」を続けると、再び疑念が生まれ、契約が遠のきます。
ミニサマリー:
「Yes」をもらったら、説得をやめて実行に移す。
本物の営業パーソンが持つ資質
真の営業は、話すよりも質問する時間が長い。
「人と話すのが好き」は営業の条件ではなく、むしろ危険な幻想です。
理想的なのは、次のように言える人です:
「人に質問するのが好きです。」
この一言を面接で言える人こそ、将来のトップセールスになる資質があります。
ミニサマリー:
成功する営業は「話す人」ではなく、「聞く人」である。
要点
-
「話すのが好き」は営業適性ではなく、リスク要因。
-
商談の最初に質問の許可を得ることで関係が変わる。
-
「今どこにいるか・どこへ行きたいか・なぜ行けていないか」の3問が営業の核心。
-
契約後は説得をやめ、実行フェーズへ移行する。
-
優れた営業は「話す人」ではなく「質問する人」。
デール・カーネギー東京について
次の商談では、話す時間を減らし、質問を増やしてみてください。
営業とは流暢に話すことではなく、「相手にとって何が重要か」を発見する仕事です。
聞く力を磨くことが、信頼と成果への最短ルートです。
デール・カーネギー・トレーニングは、1912年米国創設以来、
リーダーシップ、セールス、プレゼンテーション、エグゼクティブ・コーチング、
DEIなどの分野で100年以上にわたり世界中の企業と個人を支援してきました。
東京オフィスは1963年に設立され、日本企業と外資系企業の成長を支え続けています。