感情で売り、論理で納得させる ― 日本の営業に必要な「情熱」
はじめに
「人は感情で買い、論理で正当化する」とよく言われます。
では、その“感情”はどこから生まれるのでしょうか?
日本の営業現場では、データやスペック中心の「乾いた論理型トーク」が主流です。
しかし、論理だけでは人は動きません。購買を後押しするのは、あなた自身の情熱と信念です。
論理だけの営業が響かない理由
多くの日本人営業は、丁寧に説明する一方で、感情が伝わりません。
トーンは単調、エネルギーは低く、結果として情報の“押し売り”になってしまう。
1992年以降、日本で営業と購買の両方を経験してきましたが、
本気の情熱をもって語る営業担当に出会った記憶はほとんどありません。
ミニサマリー:
論理は理解を生むが、感情こそが購買意欲を生む。
買い手の「心の中の会話」に入り込む
顧客の頭の中では常に「リスク」「責任」「信頼性」を巡る対話が続いています。
営業の役割は、その内なる会話に入り込み、方向性を変えることです。
日本の買い手は、一度信頼を得ると非常に感情的にロイヤルティを持ちます。
その根底にあるのは、「失敗したくない」「信頼できる人と取引したい」という強い感情です。
ミニサマリー:
日本での信頼は感情の上に成り立ち、一度築けば長期的な関係へと変わる。
新規顧客に信頼されるまでの壁
課題は、新しい顧客にどう信頼してもらうかです。
実績のない状態では、あなたは“未知のリスク”です。
この壁を越える方法はシンプルです。**「試してもらう」**こと。
小さなサンプル提供やトライアル導入で、相手にリスクのない選択肢を示しましょう。
新しい取引先を導入するには、社内で何重もの承認が必要です。
「まず試す」提案は、相手の心理的負担を大きく減らします。
ミニサマリー:
新規営業では、まずリスクを取り除き、安心して試せる仕組みをつくる。
営業の成功を左右する「情熱の力」
論理は安心を与え、情熱は信頼を生みます。
顧客は、あなたの声や姿勢、表情から「本気度」を感じ取ります。
名古屋で事業を始めた私の義父は、ある企業の社長に取引を求め、
毎朝その社長の自宅前で2週間、深々とお辞儀を続けました。
ついに社長が理由を尋ね、面談の機会を与え、その後その企業は主要取引先となりました。
それは論理ではなく、情熱に動かされた決断でした。
ミニサマリー:
情熱は信頼の証。信念と誠実さは、最強の営業ツール。
情熱を「押しつけ」ではなく「信頼」に変える
情熱とは、大声で話すことではなく、本気の信念を伝えることです。
自分に問いかけてみてください。
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自分自身、商品やサービスを本当に信じているか?
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自信と誠実さが伝わる話し方をしているか?
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できること・できないことを正直に伝えているか?
顧客はあなたの本気度を敏感に感じ取ります。
情熱を伴わない営業は、いくら論理的でも響きません。
ミニサマリー:
本物の情熱と誠実さが、論理では得られない共感と信頼を生む。
要点
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日本の顧客は「感情で買い、論理で納得する」。
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多くの営業は「情報提供」で終わり、感情を動かせていない。
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無料サンプルや小規模トライアルで「リスクのない信頼構築」を。
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誠実さ・信念・情熱を、言葉と態度で伝える。
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情熱は最も説得力のある「信頼の証」。
デール・カーネギー東京について
次の商談では、商品説明よりも「自分の信念」を語ってみましょう。
あなたのエネルギーと情熱が、顧客の信頼を呼び込みます。
論理ではなく、感情で動かす営業を実践してください。
デール・カーネギー・トレーニングは、1912年米国創設以来、
リーダーシップ、セールス、プレゼンテーション、エグゼクティブ・コーチング、
DEIなどの分野で100年以上にわたり世界中の企業と個人を支援してきました。
東京オフィスは1963年に設立され、日本企業と外資系企業の成長を支え続けています。