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ルールが思考を止めるとき ― 柔軟な顧客対応はリーダーシップから生まれる

はじめに

BtoB営業では、課題の多くが「フォローアップ不足」にあります。
一方、BtoCでは問題はもっと早く、最初の接点から始まります。
なぜでしょうか。
それは、現場スタッフの問題ではなく、リーダーシップの問題です。
スタッフが“ルール”に縛られ、考えることを放棄しているとしたら、それはマネジメントが柔軟な判断を許していない証拠です。

常識よりもルールが優先される現場

営業である私たちは同時に「買い手」でもあります。
外食や買い物などで、顧客としての体験を日々しています。
その中で感じるサービスの違和感は、まさにリーダーシップの欠如を映す鏡です。

先日、ミッドタウンのレストランに11時31分に電話をして、12時のランチ予約をお願いしたところ、
「ランチの予約は11時30分で締め切りです」と即答されました。
たった1分の違いにもかかわらず、柔軟性はゼロ。
「では、他の店に予約したほうがいいですね」と返しても、反応はなし。
彼の使命は「規則を守ること」であり、「お客様をもてなすこと」ではなかったのです。

ミニサマリー:
ルールの盲信は、顧客を失い、チャンスを逃す文化を生む。

小さな柔軟性がもたらす大きな価値

その1分のやり取りで、パンデミックで苦しむ飲食業界の中で、
確実なランチ2名分の売上を逃しました。
もし彼がこう言っていたらどうでしょう。

「通常は11時30分で締め切りですが、今回はお受けします。12時にお越しください。“太郎”をお呼びください、私がご案内します。」

この一言で、私は“特別な顧客”として扱われたと感じ、
再訪やリピーターになる可能性は格段に上がったはずです。

ミニサマリー:
柔軟な一言が、初来店客を長期のファンに変える。

2つのレストランに見る文化の違い

対照的なのが、半蔵門の「エリオ」です。
私は2001年から、クライアントや家族と20年以上通い続けています。
その理由は、料理だけではなくサービス文化にあります。
スタッフ全員が顧客の生涯価値(Lifetime Value)を理解し、
一人ひとりを大切に扱うリーダーシップが根付いているのです。

ミニサマリー:
顧客ロイヤルティは、サービスではなく文化によって生まれる。

リーダーが顧客体験をつくる

顧客対応の問題は、最終的にリーダーシップの問題です。
スタッフは自分の判断で動けていますか?
企業の価値観を理解し、自信をもって行動していますか?
もしそうでなければ、私たちは「従順さ」を育てており、「主体性」を育てていません。

上司はすべての顧客対応に立ち会うことはできません。
だからこそ、企業文化が現場に代わってお客様と向き合うのです。

ミニサマリー:
リーダーシップが柔軟性の範囲を定め、文化がそれを日々実践する。

行動を定着させる「繰り返しの力」

理念や顧客志向を一度伝えただけでは、誰も覚えていません。
リーダーの仕事は、何度も繰り返し伝えることです。
顧客への姿勢を、企業のビジョンやミッションと結びつけて語り続けましょう。
それが文化となり、スタッフ一人ひとりの判断基準になります。

ミニサマリー:
繰り返しが文化をつくり、文化が信頼をつくり、信頼がビジネスをつくる。

要点

  • BtoCでは、失敗は「最初の接点」から始まる。

  • 現場の問題はリーダーシップの問題である。

  • 柔軟な対応の一言が、顧客ロイヤルティを生む。

  • 文化が「ルール遵守」ではなく「顧客志向」を育てる。

  • 理念と顧客体験をつなげ、繰り返し伝えることが文化を定着させる。

デール・カーネギー東京について

自社の文化を振り返ってみましょう。
あなたのチームは「ルールに仕える人」になっていませんか?
柔軟に考え、顧客を第一に行動できるチームこそ、リーダーの真の成果です。

デール・カーネギー・トレーニングは、1912年米国創設以来、
リーダーシップ、セールス、プレゼンテーション、エグゼクティブ・コーチング、
DEIなどの分野で100年以上にわたり世界中の企業と個人を支援してきました。
東京オフィスは1963年に設立され、日本企業と外資系企業の成長を支え続けています。

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