日本における営業プロセスと意思決定文化を理解する
なぜ多くの営業担当者は「完全な営業プロセス」を理解していないのか?
多くの営業担当者は、営業プロセスの一部だけを経験から寄せ集めて使っています。
全体像を体系的に理解していないため、提案や交渉の流れに一貫性が欠けるのです。
私がデール・カーネギーのマスタートレーナー、デイブ・スターンズ氏から営業トレーナー認定を受けた際、彼はホワイトボードの右上から書き始め、営業プロセスの全体を順序立てて描き出しました。
ボードがいっぱいになるほどの見事な流れで、それを見た瞬間、「自分には到底できない」と感じました。
しかし今では、私自身も顧客と向き合う際、同じプロセスを頭の中で描きながら営業を進めています。
ただし日本では、一度の面談で全てのプロセスを完了することはほとんどありません。
ミニサマリー:
営業プロセスを体系的に理解することで、一貫性と信頼性が生まれる。しかし日本では複数回に分けて進むのが一般的です。
日本の営業サイクルは他国とどう違うのか?
日本の営業では、初回面談で質問フェーズまで進み、解決策の提示は次回以降に行われることが多いです。
提案後に異議対応(オブジェクションハンドリング)とクロージングに入りますが、「クロージング=即決」ではありません。
ここから社内の承認プロセスが動き出すのです。
ミニサマリー:
日本の営業サイクルは慎重で段階的。社内承認を得るまでに時間がかかります。
日本の意思決定プロセスの特徴とは?
日本の企業では、合意形成型の「稟議制度(Ringi Seido)」が意思決定の中心です。
課長や部長が稟議書に**判子(はんこ)**を押し、合意が一定数集まると役員層に上がり、最終承認が得られます。
営業担当者が全ての決裁者と直接会うことはほぼありません。
目の前の担当者が「社内の推進者(チャンピオン)」となり、提案を社内で通してくれることが鍵になります。
しかし彼ら自身も権限が限られており、「早く進めてください」と急かしても動かせないのが現実です。
ミニサマリー:
日本では「説得」よりも「調和」が重視されます。チャンピオンの力にも限界があるため、プロセスを尊重する姿勢が大切です。
質問フェーズから提案フェーズへどうつなげるか?
質問を通じて相手の課題を理解した後は、いきなり詳細提案に入るのではなく、「サジェスチョン段階(仮提案)」を挟むのが効果的です。
この段階では、細部よりも方向性の一致を確認することが目的です。
おおまかなアイデアを提示し、「この方向で間違っていませんか?」と確認します。
相手が納得すれば、正式提案(プロポーザル)へと進むことができます。
このとき、他の競合企業と同時に比較検討されることも少なくありません。
ミニサマリー:
提案前の「方向性確認」が信頼を築く第一歩。強引な説得よりも共感を優先します。
提案とプレゼンテーションはどう進めるべきか?
正式な提案書では、内容の詳細・導入効果・実施方法などを明確に示します。
もちろん価格も重要な要素ですが、日本では高価格でも品質が高ければ評価される傾向があります。
この段階では「信頼」が最大の通貨です。
相手はまだ発注していない段階で、私たちの説明を信じて判断するしかありません。
だからこそ、提案プレゼンは構成・自信・専門性のすべてが問われます。
ミニサマリー:
日本では「信頼」と「品質」が提案成功の鍵。プレゼン力がその信頼を裏づけます。
なぜ実績紹介が日本で効果的なのか?
日本企業は「実績」を重視します。新しい試みの実験台にはなりたくありません。
そのため、過去のプロジェクトを例に出して説明することが信頼を得る近道です。
クライアント名を出せなくても、どのような課題をどう解決したのかを具体的に伝えることで安心感を与えられます。
その際は、自信・確信・知識をもって語ることが大切です。
ミニサマリー:
過去の成功事例は、信頼を生む最強の証拠です。日本では「前例のある安心感」が購買を後押しします。
要点
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多くの営業担当者は全体構造を理解していない。体系的なプロセスが鍵。
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日本では商談が複数回に分かれ、社内承認に時間がかかる。
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稟議制度による合意形成には忍耐と理解が必要。
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提案前の「方向性確認」が信頼を生む。
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実績とプレゼン力が最終判断を左右する。
デール・カーネギー・トレーニング東京について
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