「任せたつもり」が進まない理由——RAMEでつくる“責任あるデリゲーション”の実践法
なぜデリゲーションは「任せたはずなのに進まない」状態になりやすいのか?
先週、部下に仕事を任せてみて、実際どうなりましたか?
説明も説得もしたつもりなのに、時間が経つと別の案件が優先され、こちらのタスクが後回しになる——日本企業・外資系企業の現場でよくある光景です。
リーダーの頭の中では「進んでいるはず」なのに、現場ではほぼ止まっている。このギャップの正体は “責任の所在が曖昧なデリゲーション” です。
ミニサマリー:
デリゲーションは「任せたつもり」では機能しない。責任(アカウンタビリティ)をどう設計するかが鍵。
なぜマイクロマネジメントも“ほったらかし”も、どちらも失敗するのか?
マイクロマネジメントの問題
手順・期限・やり方を細かく指示し続けると、
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プロとしての自尊心が傷つく
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「信頼されていない」と感じる
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不満と反発が蓄積する
放任(ラッセフェール)の問題
一方で、何のフォローもなく完全放置すると、
「上司も重要だと思っていない案件なんだな」
と解釈され、優先順位がどんどん下がっていきます。
ミニサマリー:
やり過ぎの管理も、完全放置も「主体性」と「責任感」を奪う。
責任を明確にしつつ、自主性も守るにはどうすればよいか?
ポイントは次の3つです。
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「プロセス」ではなく 「結果」に対する責任 を明確に伝える
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開始時点で「関与の度合い」を決めておく
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重すぎ・軽すぎと感じたら、途中で調整する柔軟性を持つ
アカウンタビリティとは「監視」ではなく、「役割と期待値の明確化」です。
ミニサマリー:
結果責任の線引きを共有し、進行中も適切に“関与レベル”を調整することが重要。
デリゲーション後に陥りやすい「2つの罠」とは?
1. デリゲーションの“買い戻し”
部下があえてミスをしたり、意図的にスピードを落としたりして、上司がイライラして
「もういい、私がやる」とプロジェクトを取り上げてしまうパターンです。
これを繰り返すと、
「大変な仕事はとりあえず放っておけば、いずれ上司が回収してくれる」
という学習が起きてしまいます。
2. タスクを“宙ぶらりん(Limbo)”にする
上司も部下も、どちらも本気で責任を持っていない状態です。
上司は一部だけ取り戻しつつ忙しくて手を付けず、部下も「これはもう自分の仕事ではない」と認識してしまう。結果、プロジェクトは完全に停止します。
ミニサマリー:
「買い戻し」と「宙ぶらりん」は、どちらも責任をぼかし、組織の実行力を奪う。
RAME(Reasonable Allowable Margin of Error)とは何か?
RAME = Reasonable Allowable Margin of Error(合理的に許容できる誤差の範囲)。
これは、部下にどこまで自由度を与えるかを決めるための考え方です。
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ゴールは同じでも、アプローチが少し違うだけなら「許容範囲」として見守る
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経験豊富な上司ほど「自分のやり方が唯一の正解」と思い込みがち
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部下のやり方の中に「自分より優れた方法」が見つかることもある
一方で、結果に大きな影響が出る “重大な逸脱” が見えたら、早めに介入して軌道修正します。
ミニサマリー:
RAMEは「どこまで任せ、どこから介入するか」を決める“物差し”になる。
最終ゴールは“仕事を終えること”ではなく“人を育てること”
デリゲーションの真の目的は、
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自信(Self-Confidence)
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自律(Self-Direction)
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自己評価力(Self-Valuation)
を育て、将来のリーダー候補を増やすことです。
「上司レベルで考え行動できる人」を増やすと、組織のレバレッジは一気に高まります。
ミニサマリー:
“任せて終わり”ではなく、“任せながら育てる”ことが、リーダーとしての本当の成果。
要点整理
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デリゲーションは「責任の設計」がないと機能しない。
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マイクロマネジメントと放任は、どちらも主体性と責任感を奪う。
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RAMEにより、自由度と介入のバランスを定量的に考えられる。
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目的はタスク完了ではなく、「上司レベルで動ける人材」を育成すること。
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