日本で「エンゲージメント」を高める方法——言葉も文化も違う国で、部下の心を動かすリーダーシップ
なぜ日本では「エンゲージメント」が難しいのか?
今週のテーマは、チームメンバーのエンゲージメント向上です。
そもそも日本語には、HR文脈で使う「engagement」に相当する自然な単語がありません。多くの会社はそのままカタカナで「エンゲージメント」と表記しますが、音は伝わっても意味はピンと来ません。
Gallupなどの調査では、世界的に見て 日本のエンゲージメントスコアは常に最下位クラス。
「高いエンゲージメント層」が7%前後という結果を見た海外本社は、APAC、特に日本に対して「何とかしろ」とプレッシャーをかけてきますが、日本側からすると「文化も文脈も違うんだ」と言いたくなります。
ミニサマリー:
日本は言語的・文化的にエンゲージメントのハードルが高く、グローバル調査の見え方が実態を歪めている。
翻訳と文化が、エンゲージメントスコアをどう歪めているか?
1. 設問翻訳のニュアンス問題
例えば、よくある質問:
「あなたは家族や友人に、この会社を薦めたいと思いますか?」
日本人はここで高得点をつけにくい傾向があります。
なぜなら、
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友人が会社を嫌いになったら?
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会社が友人を嫌いになったら?
「どちらからも文句を言われたくない」という思いが強く、責任を負いたくないため、点数を控えめにするのです。
2. 完璧主義文化による「ジャパン -30%」効果
高級ブランドは、日本市場では顧客満足度の自己評価が他国より 30%低く出る ことを織り込んでいます。
「まだ完璧じゃない」と感じる日本人は、自分にも会社にも甘い点数をつけません。
ミニサマリー:
日本の低スコアは「不満」だけでなく、「責任回避」と「完璧主義」からも生まれている。
それでも日本でエンゲージメントを高めることはできるのか?
結論:できます。しかもコストゼロで。
私たちの「エンゲージメントの感情ドライバー」に関する調査から、
次の 3つの要素 と 1つの感情トリガー が特に重要であることが分かっています。
要素1:直属の上司への満足度
よく言われるように、
「人は会社を辞めるのではなく、上司を辞める」
直属のマネジャーが、
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信頼関係を築いているか
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人を大事にする文化をつくっているか
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公平・平等に扱っているか
によって、エンゲージメントは大きく変わります。
ミニサマリー:
エンゲージメント最大のレバーは「会社」ではなく「直属の上司」。
要素2:経営陣への信頼
経営陣は「ビジョンは伝えている」「皆わかっているはず」と思いがちですが、
現場はそうは感じていません。
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なぜこの方向性なのか(Why)
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どこに向かっているのか(Where)
この2つが曖昧だと、
「本当にこの経営陣について行って大丈夫か?」
という不安が生まれます。
逆に、メッセージがクリアであれば、
社員は会社の将来に自信を持ち、自分の仕事にも前向きになれます。
ミニサマリー:
「経営陣を信頼できるかどうか」が、静かにエンゲージメントを左右している。
要素3:組織への誇り
マーケ vs セールス、IT vs 他部署…。
本当の敵は競合他社なのに、社内で戦っている会社が多すぎます。
弱いリーダーは、他部署や他リーダーをけなすことで、自分のチームをまとめようとします。
その結果、「会社全体への誇り」は失われていきます。
一方で、
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自社をポジティブに語り
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仲間を誇りに思い
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「外の競合」に目を向ける
組織では、自然とエンゲージメントは高まります。
ミニサマリー:
組織への誇りがあるほど、人は自分の仕事にも誇りを持てる。
感情トリガー:上司から「自分は大切にされている」と感じること
そして、3つの要素を一気に加速させる感情トリガーがこれです:
「上司から、自分の価値をはっきり伝えられている」
人は、次のように感じたときにエンゲージメントが跳ね上がります。
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自分の仕事が意味を持っている
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自分の貢献が認められている
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自分はこのチームにとって必要な存在だ
この感覚が生まれると、人は
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自信を持ち
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インスパイアされ
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熱意を持ち
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自律的に動くようになります。
ミニサマリー:
「あなたを大切に思っている」と明言することが、エンゲージメントのスイッチを入れる。
要点整理
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日本のエンゲージメントの低さは、文化・言語・設問設計の影響も大きい。
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エンゲージメントには「上司満足」「経営陣への信頼」「組織への誇り」の3要素が効く。
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決定的な感情トリガーは「上司から明確に価値を認められている」と感じること。
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これらはすべてコストゼロで実行でき、すぐに取り組める。
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