プレゼンテーション

「説明会」が時間の無駄になる理由と、Q&Aで信頼を失わない話し方 — デール・カーネギー東京

なぜ行政の“説明会”は、こんなにも虚無感が残るのか?

近所に新設される地下鉄路線の計画説明会に参加しました。以前には、羽田空港の着陸ルート変更で、低空飛行が住宅街の真上を通ることになる説明会にも参加しています。

どちらも共通していたのは、住民の意見を真剣に聞く姿勢がほとんど感じられないこと。会の設計そのものが、「時間を使って、質問の時間をできるだけ短くする」方向に最適化されていました。

ミニサマリー: 説明会が「対話」ではなく「時間つぶし」になると、信頼はゼロになる。

どうやって“見せかけのプレゼン”で質問時間を削っているのか?

当日の進行は典型的でした。

  • スライドを投影

  • 担当者がスライドの文章を、そのまま読み上げる

参加者は全員読み書きできます。それでも読み上げる理由はただ一つ——質問時間を削るためです。

質疑応答では「ナビゲーター役」が住民の質問をいったん受け止め、感情や厳しい言い回しを削った形に“翻訳”してから、担当部署に振り直していました。これは本来、敵対的な質問をうまく扱うテクニックですが、中身のない回答と組み合わさると、逆効果になります。

ミニサマリー: スライド読み上げ+時間の引き延ばしは、「質問させない」ための装置になりがち。

これは行政だけの問題か?実はビジネスの現場も同じ罠に陥っている

日本企業のビジネスプレゼンも、構造はよく似ています。

  • 司会が形式的な案内と注意事項を読み上げる

  • 社長や役員は、部下が作ったスライドをただ読むだけ

  • スクリーンが後ろにあると、聴衆に背中を向けたまま読み上げる

  • 「社長の負担を減らす」目的のだけの、内容の薄い企業ビデオを流す

形式は丁寧でも、聴衆との対話や説得という本質が抜け落ちている点は、行政とビジネスで共通です。

ミニサマリー: 形だけ整った「読み上げプレゼン」は、ビジネスでもブランドを静かに傷つけている。

なぜ多くの話し手は、質問に対して“反射的に答えてしまう”のか?

行政の場でも、企業の会議でも、よく見られるのが次のパターンです。

  1. 質問が終わった瞬間に

  2. 間を置かずに

  3. とっさに思いついたことをそのまま口にする

その場では何とかやり過ごせたように見えても、後になって
「本当はこう答えるべきだった…」
と悔やむ経験は、誰にでもあるはずです。

原因はシンプルです。**「質問が終わってから答え始めるまでの“クッション”がゼロ」**なのです。

ミニサマリー: 脳が考える前に口が動くと、質の低い答えになり、信頼を損なう。

たった数秒の“クッション”で、答えの質は劇的に上がる

難しい質問に対して大切なのは、「一呼吸置く」技術です。例えば:

  • 「大切なご指摘ですね」

  • 「今のご質問を確認させてください。つまり○○という点でしょうか?」

  • 「非常に重要な観点なので、少し整理させてください」

こうした一言を挟むだけで、3〜5秒の思考時間が生まれます。この短い時間があるかどうかで、答えが「とっさの言葉」になるか、「考え抜かれた言葉」になるかが大きく変わります。

ミニサマリー: “クッション言葉”は、時間稼ぎではなく、答えを磨くための戦略的ツール。

答えが分からないとき、最もやってはいけないことは?

「知らない」「分からない」を認めず、なんとかごまかそうとすることです。
聴衆は意外なほど敏感で、「煙に巻かれている」と感じた瞬間に信頼は崩れます。

ベターな対応はこうです。

「その点については、今手元に正確な情報がありません。よろしければ、終了後に名刺交換させていただき、あらためて正式な回答をお届けします。では、次のご質問をどうぞ。」

ただしこれは、質問が非常に具体的・個別的な内容の場合に限られます。テーマのど真ん中に関する質問に答えられないのは、プロとしての準備不足です。その場合は:

「本来お答えすべき内容ですが、現時点では十分な情報を持ち合わせていません。大変失礼しました。必ず確認のうえ、回答をお届けします。」

と、正直に認めたほうが、長期的には信頼を高めます。

ミニサマリー: 「知らない」を認める勇気は、ブランドを守る最大の防御になる。

一つひとつの登壇が、あなたと会社のブランドを左右する

私たちは、人前で話すたびに、自分自身のブランド組織のブランドを市場にさらしています。

  • 曖昧な回答

  • スライド読み上げ

  • 対話を避ける態度

  • 準備不足のスピーチ

これらはすべて、「時間と敬意を軽視している」というメッセージとして伝わります。

逆に、

  • 徹底した準備

  • リハーサル

  • クッションを使った冷静なQ&A

  • 正直な「分からない」の一言

これらは、「この人・この会社は信頼できる」という印象を積み上げてくれます。

ミニサマリー: 話し方は単なるスキルではなく、パーソナルブランドと企業ブランドそのものを映す鏡である。

要点整理

  • 多くの説明会やプレゼンは、質問を減らすために構成されてしまっている

  • 行政だけでなく、企業のプレゼンも同じような“読み上げ文化”に陥りがち

  • 質問直後に反射的に答えると、質の低い回答になりやすい

  • クッションとなる一言を挟むだけで、答えの質と印象が大きく向上する

  • 「知らない」と正直に認めることは、長期的な信頼構築にはプラスに働く

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