プレゼンテーション

日本人リーダーの「エグゼクティブ・プレゼンス」を高める方法 — 完璧主義と「日本流スピーチ」の壁を超える

人口減少で国内市場が縮小する中、多くの日本企業は海外展開を加速させています。

一方、法制度の安定性や知財保護を評価した多国籍企業は、日本におけるプレゼンスを強化しています。

その両方から、共通して出てくる声があります。

「日本人リーダーに、もっとエグゼクティブ・プレゼンスを持ってほしい」

ここで言うエグゼクティブ・プレゼンスとは、肩書きよりもむしろ 「国際舞台でのプレゼンテーション力」 を指しています。

1. 企業が求める「エグゼクティブ・プレゼンス」とは何か

日本企業・外資系企業のどちらも、日本人リーダーに求めているのは:

  • 要点をわかりやすく、簡潔に伝える力

  • 論理的で筋の通った説明

  • 英語での説得力あるプレゼンテーション

  • 会議や会見での落ち着いた存在感

「英語力」が一番の問題のように思えますが、実は本質的な障害は 英語そのものではありません。

最大の障害は、マインドセットと文化的な話し方の習慣 にあります。

2. マインドセットの壁① 日本的「完璧主義」とノーミス文化

日本は世界でも稀に見る「ノーミス文化」です。

  • 製品の欠陥は許されない

  • サービスの不備は許されない

  • 「5%の不良率を許容した方が儲かる」という発想は通用しない

この文化は、そのまま 外国語での発言 にも影響します。

  • 「完璧な英語で話せないなら、口を開かないほうがいい」

  • 「間違えたら恥ずかしい」

その結果:

  • 国際会議で日本人役員がほとんど発言しない

  • プレゼンの機会があっても極力避ける

  • 仕方なくやるときは、スクリプトやスライドを読み上げる

→ 文法的には完璧でも、
  聴衆の印象は:

  • 退屈

  • 心が伝わってこない

  • エグゼクティブ・プレゼンスが感じられない

というものになってしまいます。

3. マインドセットの壁② スピーチが歴史的に重視されてこなかった

欧米では、古代ギリシャ・ローマ以来、

  • 弁論

  • 演説

  • 公開討論

が政治・文化の中心にありました。

映画の世界でも、「名演説=リーダーシップ」というイメージが強く描かれています。

一方、日本の歴史は大きく異なります。

  • 戦国武将が「ブレイブハート風」の演説を兵士の前で行うことはなかった

  • 大将は後方で情報を受け、指示を出すスタイル

  • 民衆への告知は掲示板などで行うのが基本

つまり、日本では「大勢の前で鼓舞するスピーチ」 という文化が歴史的に薄いのです。

西洋型のスピーチ文化が本格的に入ってきたのは:

  • 1875年、福澤諭吉が慶應義塾の三田キャンパスに「演説館」を開いた頃

  • まだ150年ほどの歴史しかありません

現代でも:

  • 人前で立って話すことは「偉そう」に見える

  • 話す前に「このような場でお話しするのは恐縮ですが…」と謝る

  • 謙虚・控えめ・自己主張しないことが美徳とされる

という文化が根強く残っています。

これが、

  • 自信のなさ

  • 感情を抑えた話し方

  • 「読むプレゼン」

という形で、エグゼクティブ・プレゼンスを阻む要因になっています。

4. 「日本流スピーチ」という言い訳

日本人リーダーの中には:

  • 「日本には日本の話し方がある」

  • 「欧米式のプレゼンは日本文化に合わない」

といった反論をする人もいます。

しかし、これは多くの場合、スキル不足を正当化するための“旗印” に過ぎません。

効果的なプレゼンには、国を超えて共通する基本があります。

  • 明確な構成

  • 印象に残るオープニングとクロージング

  • ロジカルな展開

  • ストーリーや具体例の活用

  • 声・姿勢・視線などの伝え方

  • 聴衆とのつながりを意識した話し方

実際、適切なトレーニングを行うと、日本人エグゼクティブでも短期間で見違えるほど変わります。

障害は「日本人だから」ではなく、「やり方を知らない」「練習していない」だけ なのです。

5. 英語が母語でないアジアのリーダーたちは、すでに先を行っている

韓国、中国、その他多くのアジア諸国の幹部たちは:

  • 母語が英語ではないにもかかわらず

  • 英語で積極的に発言し

  • 国際会議で存在感を発揮しています。

国際会議に参加すると、日本とのギャップを痛感する場面も少なくありません。

それが:

  • 公平か不公平か

  • 正しいか間違っているか

という議論はありますが、現実としてそう見られている ことは否定できません。

グローバルビジネスにおいては:

  • 英語で

  • プロフェッショナルに

  • 説得力を持ってプレゼンできるかどうか

が、リーダーの評価と影響力を左右する時代になっています。

6. 日本人リーダーがエグゼクティブ・プレゼンスを高めるための道筋

朗報は、エグゼクティブ・プレゼンスは 生まれつきの才能ではない ということです。

必要なのは:

  • 完璧主義を少し手放す(「完璧に話す」から「伝わるように話す」へ)

  • 「日本流だから仕方ない」という思い込みを外す

  • グローバル共通のプレゼン・スキルを体系的に学ぶ

  • 英語でも日本語でも、説得力のある話し方を反復練習する

その結果として:

  • 国際的な信頼関係の向上

  • 社内外ステークホルダーとの意思疎通の改善

  • リーダーとしての存在感の強化

が実現できます。

要点整理

  • 企業が求める「エグゼクティブ・プレゼンス」とは、英語を含めた 説得力あるプレゼンテーション力 である。

  • 日本人リーダーの最大の壁は「英語力」ではなく、完璧主義とスピーチ文化の薄さ にある。

  • 「日本流スピーチ」はしばしば、スキル不足を正当化するための言い訳として使われている。

  • 適切なトレーニングにより、日本人エグゼクティブも世界水準のプレゼン力を身につけることができる。

  • 英語でのプロフェッショナルなプレゼンは、今や日本人リーダーの国際的信用と影響力を左右する重要スキルである。

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デール・カーネギー・トレーニングは、1912年に米国で創設されて以来、100年以上にわたり世界中の企業・個人に対して、リーダーシップ、セールス、プレゼンテーション、エグゼクティブ・コーチング、DEIなどの分野で支援を行ってきました。

東京オフィスは1963年に設立され、日本企業および外資系企業のリーダー育成と組織開発を現在もサポートし続けています。

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