オムニチャネル・プレゼンテーション入門 — 「脳・心・腹・セクシーさ」で聴衆を動かす4つの設計軸
「オムニチャネル」という言葉は、通常はマーケティングや営業で、複数の接点を通じて顧客にアプローチする戦略として使われます。
同じ発想を、プレゼンテーション設計にも応用できるとしたらどうでしょうか。
多くのプレゼンは “脳” だけ を相手にしています。
ロジック、データ、分析——それはもちろん必要です。
しかし、それだけでは人は動きません。
本当に人を動かすプレゼンは、脳・心・腹・セクシーさ の4つのチャンネルを同時に刺激しています。
1. チャンネル① 脳(Brain)— ロジック・構成・証拠
まず必要なのは、もちろん 論理 です。
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明快な構成
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一貫したストーリーライン
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データ・統計・事例・証言などの証拠
これらが揃っていないと:
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話があちこちに飛ぶ
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何を言いたかったのか分からない
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「結局この人は何を伝えたかったのか?」で終わる
といった悲劇が起きます。
実際に:
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海外からのVIPが
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自分の思想をあれこれと語り散らした結果
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聴衆も、主催企業のブランドも、まとめて傷ついた
というケースは少なくありません。
一部の聴衆は、非常に分析的なタイプです。
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ロジック
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データの整合性
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前提条件の正しさ
などを厳しくチェックしています。
この層を満足させるために、論理と証拠のチャンネル は不可欠です。
しかし、それだけでは “片手落ち” です。
2. チャンネル② 心(Heart)— 感情と人間ドラマ
人間は、論理だけで動くわけではありません。
むしろ、多くの意思決定は 感情で決めて、後から理屈をつけている と言われます。
小説・映画・ドラマは、まさに感情を揺さぶるための構造で作られています。
ビジネスプレゼンでも:
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人が苦しんだ話
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決断に迷った話
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失敗から立ち上がった話
といった 人間ドラマ を少し織り込むだけで、聴衆の心への届き方が大きく変わります。
ビジネスの世界には:
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企業価値を吹き飛ばした失策
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社内派閥の争い
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勝者と敗者、裏切りと救い
など、“ドラマのネタ” は無限にあります。
感情を揺らさずに、人を動かすことはできません。
3. チャンネル③ 腹(Gut)— 価値と「自分ごと感」
3つ目は 腹のチャンネル、つまり「価値」と「自分ごと感」です。
聴衆の頭の中には、常にこの問いがあります。
「で、これって 自分に 何の得があるの?」
したがって、プレゼンでは:
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新しい気づき・視点を提供できているか
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仕事や人生にすぐ使える具体的な価値があるか
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聴衆が心の中で抱えている質問を代弁し、答えを提示できているか
を必ずチェックする必要があります。
よくある失敗例:
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世界的巨大企業の幹部が「パーソナルブランディング」について講演
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話の内容は「巨大組織の中でブランドを高める方法」
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聴衆の大半は中小企業のビジネスパーソン
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結果:持ち帰れるものゼロ、価値ゼロ
プレゼンの価値は、話し手の満足ではなく、聴き手の持ち帰り で決まります。
4. チャンネル④ セクシーさ(Sex Appeal)— テーマ・タイトル・見せ方
最後のチャンネルは、少し刺激的な言い方をすれば 「セクシーさ」 です。
ここでいうセクシーさとは:
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「思わず参加したくなるテーマ」
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「クリックしたくなるタイトル」
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「話を聞き続けたくなる見せ方」
の総称です。
① テーマとタイトルは「集客装置」
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いまホットなテーマか
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聴衆の痛みや関心に直結しているか
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タイトルを見ただけで「聞きたい」と思えるか
「How to 〜」型のタイトルや、少し挑発的な表現は、参加者の興味を引きやすくなります。
② デリバリー(話し方)もセクシーさの一部
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洒落た一言
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瞬発力のあるツッコミ
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コメディアンのようなトーク
がなくても構いません。
大事なのは:
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面白くて中身のあるストーリー を語ること
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聴衆がメモを取りたくなるポイントを散りばめること
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学び(Education)と楽しさ(Entertainment)を組み合わせた「エデュテインメント」にすること
「この人の話は、また聞きたい」と思わせた時点で、あなたのプレゼンには十分なセクシーさがあります。
5. オムニチャネルでプレゼンを設計するためのチェックリスト
プレゼンを設計するとき、ぜひ自分に問いかけてみてください。
「今回の内容は、4つのチャンネルを全部カバーできているか?」
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脳(Brain)
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ロジックは通っているか
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構成はわかりやすいか
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証拠・データ・事例は十分か
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心(Heart)
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人間ドラマはあるか
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感情が動く瞬間をつくれているか
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腹(Gut)
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「自分ごと」として受け取れる内容になっているか
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具体的な持ち帰り価値があるか
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セクシーさ(Sex Appeal)
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テーマとタイトルは魅力的か
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話し方・見せ方に工夫があるか
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聴衆のタイプや興味はさまざまです。
しかし、この4つのチャンネルを意識して設計すれば、刺さる確率は大きく高まります。
要点まとめ
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多くのプレゼンは「脳」にしか話しかけておらず、心・腹・セクシーさが抜け落ちている。
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ロジックと証拠は必要条件だが、それだけでは不十分。
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感情を動かすストーリーと人間ドラマが、記憶と共感を生む。
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「自分にとっての価値」が見えないプレゼンは、どれだけ立派でも失敗。
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テーマ・タイトル・話し方まで含めて「セクシーさ」を設計することで、参加者とエンゲージメントが増える。
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次のプレゼンから、「脳・心・腹・セクシーさ」のオムニチャネル視点で設計しよう。
もしあなたが:
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「ただの説明」に終わるプレゼンから卒業したい
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聴衆の心と行動を動かすプレゼンをしたい
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