スライド作りから始めるのはもうやめよう — コラボと計画でプレゼンの質を一気に高める方法
プレゼンの機会があると、多くの人が真っ先にすること:
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パワーポイントを開く
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新しいスライドを作り始める
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過去資料からスライドをコピーして貼り付ける
その結果——
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何となくそれっぽいけれど
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言いたいことがぼやけた
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どこかで見たような
“量だけ多いプレゼン” が出来上がります。
普段、部下やメンバーには:
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「事前にちゃんと計画しよう」
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「目的を明確にしてから動こう」
と言っているのに、プレゼン準備になると、自分だけは例外扱いしていませんか?
1. 最初にやるべきは「一言に絞る」こと
スライドに触れる前に、まず自分に問うべきはこれです。
「このプレゼンで、一番伝えたいことは何か?」
狙うべきは:
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短く
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鋭く
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覚えやすい
“核となるメッセージ” です。
この一文が決まっていない状態でスライドを作り始めると、話全体が散漫になりがちです。
スライドは「飾り」ではなく、この一文を支えるための “道具” です。
2. 一人で考えない:プレゼン準備こそコラボすべき
理屈では、みんな分かっています。
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「二人の頭は一人の頭より良い」
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「チームでアイデアを出し合おう」
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「オープンコラボレーションが大事」
ところがプレゼン準備になると:
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ひとりでこもって
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スライドを作り
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出来上がってから見せる
という 「洞窟方式」 になりがちです。
しかし現実はこうです。
「自分が知っていることしか、話せない。」
だからこそ、他者の視点と経験 を取り込む必要があります。
3. 知らない業界のキーノートをどう準備したか
大阪で行われる「海外引越し業界」のカンファレンスで基調講演を依頼されたとき、自分も会社も 業界知識ゼロ という状態でした。
そこで行ったのは:
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その業界で働く知人・コンタクトに電話
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「今、現場で何に困っているのか?」
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「どんな課題やストレスがあるのか?」
を徹底的に聞くこと。
こうして、相手の現実 をベースにしたプレゼンの骨格が見えてきました。
最終的に、コロナでそのイベントは中止になりましたが、このプロセスを通じて、「外部の声を取りに行く価値」が改めて確認できました。
4. 本のタイトルが決まったのも「雑談コラボ」から
拙著 Japan Sales Mastery を日本語化するとき、タイトルの日本語版にかなり悩みました。
友人の安達卓さんとランチをしているとき、この悩みを話したところ、
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「『ザ・営業(ザ・エイギョー)』でいいんじゃない?」
という一言が出てきました。
さらに後日、息子からは:
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「『ザ』をカタカナで入れるより、英語の “The” をそのまま使った方が面白い」
というアイデアが出て、最終的にタイトルは 『The 営業』 になりました。
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日本人ではなく外国人が
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日本語で営業について語る
という立ち位置を、タイトルそのものが表現してくれる形になりました。
これも、自分一人では絶対に出てこなかった答え です。
5. アイデアを「深く」もらうための聞き方
いきなり近づいて、
「今度こんなプレゼンするんですけど、何かアイデアあります?」
と聞いても、その場しのぎの浅いコメントしか返ってこないことがほとんどです。
深いアイデアをもらうには:
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まずテーマと背景をしっかり説明する
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すぐに意見を求めず、数日後に打合せを設定する
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その間に相手が「考える時間」を持てるようにする
打合せの場では:
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最後まで話を遮らない
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途中で口を挟まない
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「いや、それは違うと思うんですよ」と反射的に否定しない
ことが大切です。
その上で、もらったアイデアは 自分の中で静かに選別 します。
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採用しない
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一部だけ取り入れる
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そのまま採用する
のいずれでも構いません。
コラボレーションとは、「全部言う通りにする」ことではなく、選択肢と視点を増やすこと です。
6. フィードバックで自信を折らない工夫
プレゼンの構想段階でフィードバックをもらうとき、やり方を間違えると 自信がボロボロになる 危険があります。
おすすめの聞き方は、必ずこうフレームすることです。
「まず、どこが良かったか教えてください。」
「そのうえで、どうすればもっと良くなるか教えてください。」
この順番にすることで:
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長所が明確になる
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改善点も「ダメ出し」ではなく「伸ばし方」として聞ける
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自信とやる気が維持される
プレゼンの自信は、本番だけでなく 準備段階から 作られます。
7. コラボを「前提」にした準備プロセスを設計する
ここまで読んで、
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「時間がかかりそうだな」
と思ったかもしれませんが、実際にはそれほど大きな負担ではありません。
やることは:
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最初から相談する前提でスケジュールを引く
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誰に何を聞くかを決めておく
これだけです。
よく言われる格言:
「失敗を計画する人はいない。
しかし、多くの人は『計画しないこと』によって失敗する。」
プレゼン準備に当てはめるなら:
「つまらないプレゼンをやろうとしている人はいない。
しかし、多くの人は『一人でやること』によってつまらなくしている。」
最初からコラボの時間を組み込んでおけば、プレゼンの質は確実に上がります。
要点まとめ
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スライド作りから入ると、メッセージがぼやけやすい。
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まず「一番伝えたいこと」を一文に絞ることが出発点。
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知らない業界・テーマほど、外部ネットワークからのヒアリングが効果的。
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良いアイデアをもらうには、「説明 → 時間 → 対話」の3ステップが必要。
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フィードバックは「何が良いか」→「どうすればもっと良いか」の順で聞く。
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コラボレーションを前提にした準備プロセスを設計することで、プレゼンの質と自信が大きく向上する。
次のプレゼンを、
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とりあえずスライドを作って間に合わせるのか
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しっかり計画とコラボを入れて、結果を変えるのか
どちらにするかは、今日決められます。
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