プレゼンテーション

エンジニアにこそプレゼン力が必要な理由 — 数式だけではキャリアを守れない

なぜエンジニアは“数学>英語・プレゼン”を選びがちなのか?

高校・大学で理系を選んだ多くの人にとって、数学や工学は明快で論理的、正解がある世界です。一方、プレゼンテーションやスピーチは「感覚的」「芸術的」で、エンジニアから見ると“フワッとした世界”に見えがちです。
その結果、多くのエンジニアは プレゼンを避けてキャリアを進めます

しかし現在、クライアントは エンジニア本人と話したい と望みます。営業担当だけでなく、技術者が同席し、場合によっては「どの会社のエンジニアに任せるか」をプレゼンで決める“ビューティーパレード”も一般的になっています。

ミニサマリー: 最初のうちは避けられても、キャリアが進むほどエンジニアも前面に出ざるを得ない。

プレゼンが苦手なエンジニア vs. 上手なエンジニア、選ばれるのはどちらか?

顧客の前に2人のエンジニアが立つとします。

  • 一人は、ぼそぼそ話し、まとまりがなく、自信なさげ

  • もう一人は、要点が明快で、簡潔で、内容をしっかりコントロールしている

技術力が同じなら、どちらに仕事を任せるかは明らか です。
顧客は「分かりやすく説明してくれる人」「信頼して任せられる人」に決めます。

ミニサマリー: 実力が拮抗しているとき、プレゼン力が最終決定要因になる。

昇進したエンジニアに突然求められる“発信力”とは?

日本企業・外資系企業を問わず、優秀なエンジニアが昇進すると、今度は:

  • 部門を代表して経営層に報告する

  • 他部署・他拠点のメンバーを説得する

  • 重要プロジェクトの説明責任を負う

といった役割が増えます。
このタイミングで人事部から研修会社に連絡が入ります。

「技術は一流なのに、プレゼンがひどくて…。何とかしてもらえませんか?」

問題は頭脳ではありません。多くの場合、プレゼンの重要性そのものへの認識が低い のです。

ミニサマリー: 出世すればするほど、“話せないリーダー”は組織にとってリスクになる。

なぜエンジニアはプレゼンを「フワフワしたスキル」と見なしてしまうのか?

エンジニアは、測定可能なハードスキルを好みます。

  • 正確さ

  • ロジック

  • 測定可能なスペック

一方で、プレゼンテーションは:

  • 良し悪しが主観的に見える

  • 定量的に評価しづらい

  • 「感覚」「センス」と誤解されがち

しかし実際には、説得力は 再現性のある技術 です。

  • ロジックの通った構成設計

  • 適切で強いエビデンスの選定

  • 聴き手に伝わる話し方と見せ方

これらはすべて、エンジニアリングと同じく「設計可能なプロセス」です。

ミニサマリー: プレゼンは“感覚”ではなく、構造設計と証拠で組み立てる技術である。

なぜオープニングの数秒で、勝敗が決まってしまうのか?

私たちは今、注意散漫の時代・シニシズムの時代 に生きています。

  • 集中力は数秒単位

  • スマホは常に手元

  • オンラインならマルチタスクし放題

その中で、冒頭からスライドや接続に手間取り、
「あれ、画面が出ないな…」「聞こえますか?」
などとやっていると、聴衆は一気にスマホの世界へ旅立ちます。

どれだけ高度なデータでも、一度意識を失った聴衆は戻ってきません。
だからこそ、最初の一言が「掴み」になっていること が重要です。

ミニサマリー: ファーストインプレッションは数秒で決まる。技術の高さだけでは取り戻せない。

エンジニアが自信なく話してしまう本当の理由は?

多くのエンジニアは:

  • 普段からあまり話さない

  • プレゼンの場数が極端に少ない

  • 「できるだけ人前で話したくない」と思っている

その結果、練習の機会が決定的に足りない ため、不安が増幅されます。
自信がないのに自信ありげに話すためには、ある程度の“演技力”が必要ですが、それを学んだことがない人がほとんどです。

ミニサマリー: 自信のなさは「才能不足」ではなく「練習不足」から生まれている。

リハーサルは、エンジニアにとって最も再現性の高い武器

エンジニアにとって、リハーサルは強力なツールです。

  • ロジカルな構成を「滑らかな言葉」に変換できる

  • 自分のメッセージを自分自身がまず信じられるようになる

  • 緊張が「慣れ」に置き換わっていく

それでも多くの人が、スライド作りに時間をかけすぎ、リハーサルを軽視 しています。
しかし、聴衆を動かすのはスライドではなく「話し手そのもの」です。

「訓練で多く汗を流せば、戦いで流す血は少なくて済む」
と言われるように、失敗は練習で済ませるべきです。

ミニサマリー: リハーサルは、技術力を“説得力”に変換する工程である。

要点整理

  • エンジニアも今や、クライアントや経営層の前で話すことを避けて通れない。

  • プレゼン力は、案件獲得や昇進を左右する“見えない評価軸”である。

  • プレゼンはフワフワした芸術ではなく、構造と証拠に基づく「設計可能な技術」。

  • リハーサルとマインドセットの転換が、エンジニアを“影の存在”から“影響力のある存在”に変える。

技術力だけでなく、説明する力・説得する力 をエンジニアに身につけさせたい人事・マネジャーの方へ。

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