下手な動画メッセージがリーダーの信用を一瞬で壊す理由 — そしてその防ぎ方
「これはひどい…」と感じたリーダーメッセージ動画
ある組織のリーダーが、大きな財務変更を求めるビデオメッセージを出していました。
見ていて思わずこうつぶやきました。
「これはまずい…。何を考えてこれを出したんだ?」
内容は重いのに、見せ方はお粗末。
コミュニケーション専門チームも、優秀なリーダー層もいるはずなのに、なぜこんな“事故”が世に出てしまったのか。
これはまさに、日ごろコミュニケーションやプレゼンを軽視しているリーダーが、いきなり大勝負に出て派手にコケる典型例 です。
ミニサマリー: 高リスクのメッセージほど、話し方・見せ方の弱点が露骨に出る。
1. 背景がメッセージの「信頼度」を決める
多額の予算や大きな変革をお願いする時、画面に映るすべてが信頼性を左右します。
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背景は“軽い雰囲気”ではなく、落ち着いたプロフェッショナルな印象か
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画面の後ろで人がウロウロしていないか
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「大事な話をしている雰囲気」が画面全体から伝わるか
今回の動画は、背景が軽く、さらに人が動き回る環境。
真剣な話のはずなのに、画面は軽すぎてメッセージの重さと完全にミスマッチでした。
ミニサマリー: 背景が軽いと、話の中身まで軽く見える。
2. カメラはエネルギーを“2割カット”する
ビデオになると、リアルよりもエネルギーが落ちて見えます。
もともとエネルギーレベルが低いリーダーは、画面上では死人のように見えるリスクすらあります。
説得力を出すには:
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声のエネルギーを意識的に上げる
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ジェスチャーを使って身体でメッセージを支える
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強弱・間(ポーズ)をしっかり入れる
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キーワードを明確に「打つ」
これらがないと、内容は合っていても、印象は「ぼんやりしていて、よく分からない人」です。
ミニサマリー: カメラに映るときは、体感よりもかなり“盛ったエネルギー”が必要。
3. レンズが聴衆だと理解できているか?
カメラのレンズは 「その先にいる全員の目」 です。
そこから目をそらせばそらすほど:
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落ち着きがない
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ごまかしている
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何か隠していそう
という印象を与えます。
ポイント:
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レンズを真正面から見て話す
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カメラとの距離を取り、上半身+ジェスチャーが映るようにする
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メモや机ばかり見ない
ミニサマリー: レンズを見続けることが、誠実さと自信の“見た目の源泉”。
4. 大事な話なのにフリースタイルは危険すぎる
「今回は重要な動画だから、一発勝負で思いの丈を話そう」
——これは最悪の戦略です。
世界のトップリーダーたちは、重要メッセージを必ず テレプロンプター で管理します。
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原稿を磨き込む
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言葉のニュアンスを調整する
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話す順番や構成を最適化する
テレプロンプターを使うときの注意点:
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スピードを自分の話速に合わせて調整する
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目線が左右に泳がないように、中心付近を見続ける練習をする
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読みながら、感情と抑揚をしっかり乗せる
ミニサマリー: 高リスクなメッセージほど、「原稿+テレプロンプター」が必須装備。
5. ストーリーなし・数字のごまかしは一気に信用を失う
今回の動画には:
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希望を与えるストーリーがない
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人間味のあるエピソードがない
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数字の見せ方が“都合の良い切り取り”に見える
という問題がありました。
最もダメなのは、「被害が最小のケース」だけを見せて、
「ほら、そんなに大したことないでしょう?」
と見せようとすることです。
これは 「うまく言いくるめようとしている人」 にしか見えません。
信頼されるのは:
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全体像を正直に見せるリーダー
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痛みも含めて説明できるリーダー
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「楽ではないが、必要だ」と言えるリーダー
です。
ミニサマリー: “上手なごまかし”は説得ではなく、不信感を生むだけ。
6. 一度出した動画は取り返せない——ブランドへの打撃
公開された動画は、簡単には消せません。
今回の動画で失ったもの:
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リーダー個人の信頼
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組織全体のプロフェッショナリズム
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「この人についていこう」と思う気持ち
視聴者の頭の中には、こんな連想が生まれます。
「こんな大事な話をこのレベルで済ませる人に、本当に任せて大丈夫か?」
飛行機に乗ったとき、テーブルにコーヒーの汚れが残っていると、「こんな簡単なことができない会社が、エンジン整備はちゃんとやれているのか?」と不安になるのと同じです。
ミニサマリー: コミュニケーションの雑さは、「他の仕事も雑なのでは?」という疑いに直結する。
7. 言い訳はもはや成立しない時代
今は、プレゼンやコミュニケーションのノウハウが 無料で大量に手に入る時代 です。
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本
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動画
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ポッドキャスト
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記事
など、探せばいくらでもあります。
にもかかわらず、大事な場面で「準備ゼロ」「一発撮り」というのは、リーダーとして怠慢と言わざるを得ません。
ミニサマリー: 「知らなかった」「時間がなかった」は、もはや通用しない。
要点整理
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画面の背景と構図は、メッセージの重さに見合うものにする。
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カメラはエネルギーを削る前提で、声・表情・ジェスチャーを“盛る”。
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レンズをしっかり見続けることで、誠実さと自信を伝える。
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高リスクメッセージはフリートークではなく、原稿+テレプロンプターで管理する。
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数字や事実をごまかさず、ストーリーで人の心と頭の両方に訴える。
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雑な動画は、リーダーと組織のブランドを長期的に蝕む。
次にあなたが大事なメッセージを動画で出すとき——
「あの時の失敗動画」のようにならない準備はできていますか?
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リーダー向けプレゼン・動画メッセージの設計
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ストーリーテリング
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テレプロンプターの使い方
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カメラ前での説得力ある話し方
これらを体系的に身につけたい方は、デール・カーネギー東京までご相談ください。
デール・カーネギー・トレーニングは、1912年に米国で創設されて以来、リーダーシップ、セールス、プレゼンテーション、エグゼクティブ・コーチング、そしてDEIの分野で、100年以上にわたり世界中の企業と個人を支援してきました。
東京オフィス(1963年設立)は、日本企業および外資系企業のリーダー人材育成を継続的にサポートしています。