プレゼンテーション

スピーカーが「昔話」で失敗する理由 — 自己紹介・会社紹介・動画活用を最適化してプレゼンの説得力を高める方法

なぜスピーカーの“栄光の昔話”は、聴衆を冷めさせてしまうのか?

Bruce Springsteen の “Glory Days” の歌詞にあるような、「昔はすごかった自慢」は、経営層のプレゼンでも頻繁に見られます。

日本企業・外資系企業の経営者・営業リーダーがやりがちな失敗:

  • 若い頃の営業時代の武勇伝を延々と語る

  • 自分にとっては面白くても、聴衆には「古い」「自慢話」と映る

  • 話せば話すほど、ホコリのかぶった“過去の人”に見えてしまう

プレゼンテーション研修の視点から見ると、聴衆が本当に知りたいのは「あなたの過去」ではなく、「自分たちの未来」 です。

ミニサマリー:
過去の栄光は、聴衆の未来につながらなければ、ただの自己満足にしか聞こえない。

自己紹介はどこまでコントロールすべきか?

多くの場合、主催者やMCがスピーカーを紹介します。
しかし、そのまま任せてしまうと:

  • 長すぎると途中を端折られ、要点が抜け落ちる

  • 読み間違い・意味不明な読み上げになる

  • 聴衆は「プロパガンダタイムが始まった」と警戒モードに入る

理想的なアプローチ:

  • 自分で短く、目的に絞った紹介文を書く

  • 今日のテーマに関係する実績だけを2〜3点入れる

  • 年表・経歴の羅列は資料やフライヤーに任せる

紹介は「自慢の場」ではなく、聴衆があなたの話を受け入れる準備を整えるための“信頼のスイッチ” です。

ミニサマリー:
自己紹介は短く・鋭く・テーマに直結させることが、信頼獲得の近道。

どこまで自分のことを話してよくて、どこからが話し過ぎなのか?

スピーカーが自分の話をする目的は:

  • 信頼性(クレディビリティ)を高める

  • 専門性を示す

  • 「この人から学ぶ価値がある」と思わせる

しかし、ありがちな失敗は:

  • 語りたいことを全部盛り込む

  • 年代順に細かく話し始める

  • 今日のテーマと関係の薄い実績まで並べてしまう

例えば:
空手の六段は素晴らしい実績ですが、プレゼンテーション研修の話をする場ではそれほど関係がありません。

一方で、「今回の内容に関連するスピーチはこれで342回目になります」という一言は、まさにその場のテーマと直結した説得力を持ちます。

ミニサマリー:
今日のテーマに直接関係する実績だけを話し、それ以外は潔く削る。

会社紹介スライドはどこまで必要か?

PowerPointを使うと、つい会社紹介を厚くしてしまいがちです:

  • 歴史スライドが延々と続く

  • 全事業・全拠点を網羅

  • 文字だらけ・情報だらけのスライドが連発

こうなると、聴衆の本音は:
「もういいから、本題に入ってくれ…」 です。

より効果的なやり方:

  • スライドは1〜2枚に絞る

  • 会社のUSP(強み)を象徴する情報だけに限定する

  • ビジュアルで“歴史・信頼”を示す

例:
歴史あるオーストラリアの銀行で働いていた時、
日本の聴衆向けには、19世紀の第1号支店の白黒写真を1枚だけ見せました。
さらに日付を「西暦」ではなく「元号」で示すことで、より古く・重みのある印象を与えることができました。

ミニサマリー:
会社紹介は「量」ではなく「象徴性」。少ない情報で深い印象を残す。

冒頭で“会社紹介ビデオ”に頼るのは、なぜ危険なのか?

多くのCEOが使う逃げ道が、「冒頭に立派な会社PR動画を流して時間を稼ぐ」 という手法です。

しかし現実は:

  • その動画は世界中どこでも使われる汎用バージョンで、今日のテーマとはズレている

  • 時間が長く、メッセージが散漫

  • 最も貴重な「オープニングの集中力ゾーン」を潰してしまう

対策としては:

  • テーマに直結しないなら、動画自体を使わない

  • どうしても使うなら、特に強い部分だけを抜き出して短く見せる

  • 「主役は動画ではなく、スピーカー本人」であることを忘れない

ミニサマリー:
オープニングは「動画頼み」にせず、スピーカー自身の存在感で勝負すべき。

自分の話・クライアント事例・聴衆の関心をどうバランスさせるか?

聴衆が本当に知りたいのは:

  • 「あなたがどれだけすごいか」ではなく

  • 「自分たちがどう良くなるのか」

そのために有効なのが:

  • 自分の成功談よりも、クライアント事例を中心に語る

  • 「私はこうやりました」よりも「こう支援した結果、クライアントがこう変わった」に焦点を当てる

  • すべてのエピソードに対して
    「これは聴衆自身の未来像を描かせる話になっているか?」
    と自問すること

リーダーシップ研修やエグゼクティブ・コーチングの現場でも、“語り手”から“聞き手”へスポットライトを移す姿勢 が、信頼と影響力を生みます。

ミニサマリー:
「私はすごい」ではなく、「あなたもこうなれる」というメッセージに変換する。

要点整理

  • 栄光の昔話は、聴衆の未来に結びつけない限りマイナスに働く。

  • 自己紹介は自分で設計し、短く・テーマ直結型にする。

  • 会社紹介は、象徴的に信頼を感じさせる最小限の情報に絞る。

  • 汎用の会社PR動画にオープニングを丸投げしない。

  • 「自分の実績自慢」より「クライアントと聴衆の成功」を語る。

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