話したい自分”が暴走するとプレゼンは崩壊する ― 有名人でも経営者でも陥る「自己中心スピーチ」の罠と、プロが徹底するAudience First の原則 ―
帝国ホテルロータリークラブの「事件」
私が所属する東京・帝国ホテルでのロータリー例会は、日本のトップ経営者が集う場であり、進行は常に完璧。
1時間のプログラムは分単位で管理され、必ず時間通りに終わります。
――はずでした。
ある日、80代の著名人がゲストスピーカーとして登壇。
誰もが知る名士、期待値は高い。
しかし彼の講演は、
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脈絡のない話の羅列
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終わりの見えない脱線
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無意味に持ち時間をオーバー
という、時間泥棒スピーチになってしまいました。
日本は著名人に寛容ですが、いかに有名でも「自分が気持ちよく話すだけ」の講演は聴衆の時間を奪い、価値を返していません。
この出来事は、“スピーカーの自己満足はブランドを壊す”という重要な教訓を思い出させました。
なぜ有名人や経営者ほど「Audience First」を失うのか?
● ① 自己重要感の肥大化
長年、周囲にチヤホヤされ続けた結果、
「自分が話せば価値になる」と錯覚してしまう
これは大企業のCEOにもよく見られる現象です。
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スタッフが出迎え
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移動は特別対応
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どこへ行ってもVIP扱い
こうした環境が続くと、“聴衆に合わせる姿勢”が薄れます。
● ② 情熱家・専門家が陥る「コンテンツ偏重」
自分の専門領域への愛が強すぎると、
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聴衆の理解レベル
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興味関心
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健全な構造
よりも、
「自分が語りたい内容」を優先してしまう。
結果として、
「この講演は誰のためのもの?」
「話しているのは気持ちよさそうだけど…」
と聴衆は冷めていきます。
プレゼンの主役は“あなた”ではない
プレゼンの本質はこれに尽きます:
スピーカーはメッセージを届ける“伝達装置”であり、主役は聴衆である。
「私がどう見えるか」「私が何を話したいか」ではなく、聴衆に何を届けるべきか? がすべての基準になる。
もし途中で焦点がブレるなら、
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テクノロジーに気を取られている
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自分のストーリーに酔っている
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話す快感に浸り始めた
という危険信号です。
Audience First を実現するための設計プロセス
● Step 1:聴衆を徹底的に調べる
最低限、以下は把握する:
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性別構成
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年齢層
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役職
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業界
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参加目的
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直前に何が話題になっているか
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会場での雑談から拾える“温度感”
ここを怠ると、ロータリーの名士を前に「雑談40分」のような誤りが起きる。
● Step 2:講演の目的を 1 文で定義する
・この講演は何を達成するためのものか?
・聴衆は講演後、何を考え、何を行動してほしいのか?
これが曖昧だと構造が崩れます。
● Step 3:構成は「聴衆の記憶に残る」ことを最優先に設計する
構造の型はシンプルであるほど強い。
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Attention(注意を奪う)
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Need(課題を共有する)
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Solution(解決策)
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Evidence(証拠)
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Action(行動の提案)
● Step 4:Q&Aは“聴衆の本音を拾う黄金時間”
Q&Aは講演の延長戦ではなく、個別のニーズを満たす場です。
ここで信頼が一気に深まります。
なぜ「時間を守れないスピーカー」は即アウトなのか?
ロータリーの例でも明らかですが、時間を守らないスピーカーは信用を失う。
理由:
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聴衆の最も貴重な資源=「時間」を奪っている
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主催者に迷惑(全体進行が狂う)
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プロの基礎ルールを守っていない印象を与える
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コントロールできていない=準備不足の証拠
時間厳守は技術ではなく“姿勢”。
聴衆尊重の象徴です。
結論 ― プレゼンは「自分の晴れ舞台」ではない
どれだけ地位が高くても、
どれだけ専門性が高くても、
どれだけ話したいことがあっても、
プレゼンは“聴衆のためのサービス”であり、
スピーカーの快楽のための場ではない。
これができる人が、講演依頼が絶えないプロのスピーカーになります。
要点整理
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スピーチは「自分のため」にするものではない
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自己中心スピーチはブランドを破壊する
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聴衆理解が設計の第1ステップ
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プレゼンの主役は常に“聴衆”
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時間厳守は信用そのもの
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エゴが発動した瞬間に、メッセージは死ぬ
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デール・カーネギー・トレーニングは、1912年米国創設以来、リーダーシップ、セールス、プレゼンテーション、エグゼクティブ・コーチング、DEIなど、世界中で100年以上企業と個人を支援してきました。
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