なぜ職場で「人間らしさ」が失われているのか?― バーチャルAI時代にリーダーが守るべき“人との接点”
「最近、チームとの距離が広がっている気がする」
「仕事は回っているが、関係性は弱くなっていないか?」
──もしそう感じているなら、それは偶然ではありません。
AIチャットボットやバーチャル存在が急速に普及する中、人間同士の接点が職場から消えつつあるという、静かな危機が進行しています。
Q1. なぜ今、バーチャルAIが人の心を奪っているのか?
― 人間関係の“代替品”としてのAI
別のポッドキャスト "The Presentations Japan Series" で語られたテーマに「バーチャル・チャットボットは文明の終わりか?」という挑発的な問いがあります。
その象徴が、XiaoIce(シャオアイス) です。
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世界の人間×AI対話の約60%を占め
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利用者数は6億6,000万人以上
このAIは、人が現実世界で得られない共感・反応・関心を巧妙に提供します。
ケンブリッジ大学のAI倫理研究者Danit Gal (ダニット ガル)はこう警告します。
「利用者は、感情を持たないシステムに対して、自分で“感情が返ってきている”と錯覚している」
ミニサマリー
👉 AIが埋めているのは、テクノロジーの隙間ではなく、人間関係の空白。
Q2. 日本も例外ではないのか?
― 仮想の存在に向かう“人恋しさ”
日本では、コロナ以前から 初音ミク のような、
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ホログラム
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バーチャルアイドル
に熱狂する人々が存在していました。
彼女は
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長い脚
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大きな瞳
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完璧な歌声
を持つ“理想の存在”ですが、実在しません。
それでも惹きつけられるのは、人が人とのつながりを求めている証拠です。
では職場ではどうでしょうか?
もし社員が
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孤立し
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誰とも話さず
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誰からも気にかけられていない
としたら、その“穴”を何が埋めるのでしょうか。
ミニサマリー
👉 人は孤立すると、現実より仮想に救いを求める。
Q3. リモートワークは何を奪ったのか?
― 失われた「偶発的コミュニケーション」
2020年2月以降、多くの企業が在宅勤務に移行しました。
便利さの一方で、次の問題が顕在化しています。
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電話がつながらない
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メッセージが埋もれる
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連絡に時間がかかる
結果として、
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作業開始が遅れる
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締切が延びる
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上司の焦りが増す
という悪循環が生まれます。
忙しくなるほど、人に気を配る余裕は削られる。これが最大の落とし穴です。
ミニサマリー
👉 リモートは効率を上げるが、関係性を削る。
Q4. 「部下がフォローしているはず」は幻想か?
― 組織全体に広がる見えない断絶
上司はこう考えがちです。
「自分は忙しいが、直属の部下がチームを見ているだろう」
しかし現実は、
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部下も同じく多忙
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自分の仕事で精一杯
というケースがほとんどです。
結果、誰も人をケアしていない組織が出来上がります。
これは
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若手だけの問題
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メンタルの弱い人の問題
ではありません。
人は年齢に関係なく、社会的動物です。
ミニサマリー
👉 放置は無関心と同義。
Q5. 私たちは「忙しさ」を言い訳にしていないか?
― スケジュールは真実を語る
「人は大切にしている」
──本当でしょうか?
答えは、過去1〜2週間のスケジュールを見れば分かります。
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人との1on1は何回あったか
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雑談やチェックインの時間はあったか
多くの場合、人の時間は後回しになっています。
そして、「部下も分かっているはず」という希望的観測に頼ってしまう。
ミニサマリー
👉 希望は戦略ではない。
Q6. バーチャルAIに人を奪われないために、リーダーができること
― 2つのシンプルな行動
すべてはできません。
しかし、最も重要なことはできます。
ステップ①:時間を“先に”確保する
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スケジュールに入れない限り
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人との時間は消える
「空いたらやる」は、永遠に来ません。
ステップ②:とにかく実行する
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完璧を目指さない
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短くてもいい
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定期的に声をかける
それだけで、人は「見てもらっている」と感じます。
ミニサマリー
👉 人間的接点は、意図しなければ生まれない。
要点整理
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AIは人間関係の不足を突いてくる
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リモート環境では孤立が加速する
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忙しさは人をケアしない理由にならない
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人との時間は、スケジュールで守る
来週の予定に「人のための時間」は入っていますか?
入っていなければ、それが答えです。
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デール・カーネギー・トレーニングは、1912年米国創設以来、
リーダーシップ、コミュニケーション、営業、プレゼンテーションを通じて、
1963年より日本企業・外資系企業の人材育成を支援してきました。