強さか、柔軟さか?― 日本のリーダーが直面する「折れない意志」と「しなやかな思考」の両立
リーダーの矛盾
「決して諦めるな」
「勝者は辞めない、辞める者は勝てない」
「地獄を通っているなら、立ち止まるな」
私たちは、こうした言葉と共にリーダー像を学んできました。
リーダーとは、組織の岩(ロック)であり、最後に立ち続ける存在。
強靭で、頑固で、簡単には折れない──。
ところが同時に、リーダーには
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柔軟性
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適応力
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変更を受け入れる姿勢
も求められます。
この「正反対の要求」をどう両立すればよいのでしょうか。
それはまるで陰と陽(yin-yang)のような、二元的な世界です。
Q1. なぜリーダーは少数派なのか?
― 人を率いることは、想像以上に大変
多くの人がリーダーにならない理由は単純です。
面倒で、重くて、ストレスが大きいから。
アメリカの名捕手であり哲学者ヨギ・ベラはこう言いました。
「リードするのは簡単だ。人に付いてきてもらうのが難しい」
結果として、ほとんどの人は「フォロワー」を選びます。
リーダーとは、面倒な役割を引き受けた少数派なのです。
ミニサマリー
👉 リーダーになる最大の理由は「他の人がやりたがらないから」。
Q2. リーダーは本当に「正しい」から指示しているのか?
― 自信と不安のあいだで揺れる存在
リーダーは時に、
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人を解雇し
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厳しい判断を下し
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自分の世界観を押し通す
必要があります。
しかし、その内側では
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「自分は本当に正しいのか?」
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「これは思い込みではないか?」
というインポスター症候群と向き合っていることも少なくありません。
一方で、自信過剰な「海賊船長型リーダー」になり、命令を怒鳴り散らす危険もあります。
ミニサマリー
👉 リーダーは「迷いながら決める」仕事。
Q3. なぜ人を通して成果を出すのは、こんなに難しいのか?
― 見えないドラムが鳴っている
現代のリーダーは、一人では何も成し遂げられません。
ところが部下は、
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価値観も
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動機も
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優先順位も
すべて異なります。
しかも、上司には決して見せない“秘密のドラム”(本音・野心・不安)を叩いています。
リーダーの仕事は、これらをまとめ、不完全な調和の中で前進させること。
だからこそ、多くの人は「いや、結構です」とフォロワーを選ぶのです。
ミニサマリー
👉 チームは論理ではなく、人間の集合体。
Q4. 忙しすぎるリーダーは、何を失っているのか?
― 委任とコーチングが消えていく
現代のリーダーは、毎日が
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会議
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メール
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意思決定
の連続です。
その結果、
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コーチング
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丁寧な委任
が「あとでやること」になり、最終的には自分の仕事として戻ってくる。
理論では分かっているはずです。
「自分にしかできない仕事だけをやるべきだ」と。
しかし現実のスケジュールを見ると、多くのリーダーは顔をしかめることになります。
ミニサマリー
👉 委任しないツケは、必ず自分に返ってくる。
Q5. 「サーバント・リーダー」は本当に現実的なのか?
― 美しい言葉と現実のギャップ
「私はサーバント・リーダーです」
この言葉を聞くと、筆者の中のシニカルなオーストラリア人が目を覚まします。
理念としては正しい。
しかし現実は、
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厳しい目標
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限られた時間
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強いプレッシャー
の中で、「誰が誰に仕えているのか?」が曖昧になります。
重要なのは言葉ではなく、優先順位です。
ミニサマリー
👉 サーバント・リーダーシップは“時間配分”で証明される。
Q6. チームの力を最大化するために、何を変えるべきか?
― 優先順位とマインドセット
答えはシンプルですが、痛みを伴います。
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チームのための時間を意図的に確保する
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完璧を求めすぎない
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「他にも山頂への道がある」と認める
これは「自分の高付加価値仕事」を一部手放すという機会コストを支払うことでもあります。
ミニサマリー
👉 人を育てる時間は、コストではなく投資。
Q7. 柔軟性は弱さなのか?
― ゼロサム思考からの脱却
多くのリーダーは、「自分が正しくなければならない」というプレッシャーを抱えています。
しかし、
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他人の意見を採用しても
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自分の価値が下がるわけではない
これは、ゼロサムゲームではありません。
自分に言い聞かせる必要があります。
「柔軟であることは、負けではない」
ミニサマリー
👉 正しさの独占を手放すと、組織は強くなる。
Q8. 陰と陽のリーダーシップとは何か?
― 強さ × しなやかさ
リーダーに求められるのは、
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折れない意志(陽)
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学び続ける柔軟性(陰)
この両立です。
簡単ではありません。
しかし、その葛藤こそがリーダーの仕事。
完璧である必要はありません。
「進化の途中」であることを受け入れることが、次の段階への入口になります。
要点整理
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リーダーは「強さ」と「柔軟さ」を同時に求められる
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人を通して成果を出すことは、本質的に難しい
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委任とコーチングを怠ると、負荷は自分に戻る
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柔軟性は弱さではなく、成熟の証
あなたは今、どちらに偏っていますか?
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強さだけで押していないか
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柔軟さを「弱さ」だと思っていないか
そのバランスを見直すことが、
次のリーダーシップ進化の第一歩です。
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