リーダーシップ

ブルース・リーから学ぶリーダーシップの極意

ソート・リーダーシップ・シリーズ ビジネスプロ #28 (リーダーシップ)

ジークンドーの創始者、アクションスターで映画のプロデューサー、そう、今日はブルース・リーの名言から、リーダーシップについて考えたいと思います。

 

主に武術の面で知られるブルース・リーですが、リーダーシップの能力でも非常に優れた方であったようです。Be water my friend『水のようになりなさい』。特に有名な彼の名言ですが、他にこんな言葉も残されているそうです。『馬鹿な人間が賢明な答えから学ぶよりも、賢明な人間は馬鹿な質問から多くを学ぶ』。この言葉が果たして本当に彼が残したものなのか、その真偽は確かではありませんが、アグレッシブではありますがリーダーシップを表現する興味深い考え方だと感じました。仮に彼が本当に言ったと思うと、説得力も増すというものです。

 

ではこの言葉、我々のリーダーシップにどう置き換えられるのでしょうか。リーダーの多くは自分の考えや独自のやり方を持っているものです。これは経験から作られた素晴らしいものであることが殆どでしょう。問題は『この経験やスキルは、チーム全員にあてはまる』と過信してしまうことなのです。部下の考えや思いには耳も貸さず『無駄なことは考えなくていいからとにかくこの方法をやってみろ』と口にしてしまった日には、その部下との信頼の間には、たとえジークンドーでも破壊し得ない分厚い心の壁が出来てしまうことでしょう。そう、賢明なリーダ―は例え自分が想像もしえなかった突拍子もない質問が部下から出てきたとしても、その質問は馬鹿げていて価値がない、と一蹴することは決してしないのです。

 

そこまで横暴ではないにしても例えば、チームメンバーでブレインストーミングをされる際、時間もないことだしと、折角出た『やる気』に溢れたメンバーからのアイデアが『それは無いな』とあっさり切り捨てられている光景、視られたことはないでしょうか。リーダーシップとマネジメントが上司の仕事ですから、ミーティングを仕切るのも否定するつもりは一切ございません。ここで考えていただきたいのは、果たしてこれが最良の結果をうむ勇逸の方法なのでしょうか。

 

ここですべてのリーダーの方に提案です。社内のアイデア会議では、司会進行をチームの他のメンバーに任せて、ご自身も参加者になられるのは如何でしょうか。懸念点としては、日本では多くの場合、上司の意見に部下が意を唱えるのは上司としても部下としても、あまり好印象に取られない印象があります。これは日本特有のものではなく、欧米社会でも同じですが、日本では特にこのカルチャーがまだ根強いという点では多くの方にご賛同いただけるかと思います。
目上の方を敬う、他人を敬う、そして年上の方を敬う、という日本が誇る美徳が、この場合、遺憾ではありますが、我々の首を絞めてしまっているのです。これにより、ディスカッションやブレインストーミングは、心理的安全性を感じて自由な発言をする場ではなく、上司の意見を伝える伝令の場になってしまっている場合が多いのです。上司がホワイトボードの前に立ってアイデアを求めるものの、経験と頭の回転の良さから「あ、それはもう前に試したよ」であったり、「それしっかり考えた?別のアイデアない?」と、出てくるアイデアを、剣術を高める大義の為だとさながら辻斬りのようにばっさばっさと次々に切り沈めていきます。意見が次から次へと出てくれば一見回転が良くて効率的に見えるかもしれませんが、上司にその場でアイデアを切り刻まれてしまっては、メンバーにバカと思われるのも嫌だし、どうせ切られるのがオチだし、とアイデアを出すこと自体にモチベーションが感じられなくなり、ついにはみんな黙り込んでしまいます。

 

ブレーンストーミング・セッションでは、馬鹿げた質問や意見に聞こえたとしても、それは潤滑油のようなものなのです。勿論、通常のディスカッションではそのようにはとりません。通常、我々は物事を順番に論理的に考えます。小さな改善を積み重ねていくような、反復的アイデアの創出を目的としたディスカッションの場合はその通り考えていただいて問題ないでしょう。

 

ところが、こと、画期的なアイデアを創出する場合は、通常の反復以上の考えが必要となるのです。突拍子もない、アウトオブザボックスの想像もつかなかったような馬鹿げたアイデアが役立つのです。

 

 

なぜなら、馬鹿げたアイデアは、普通なら考えつかない側面を見せてくれるからです。前例もなく予想外で、不合理で非論理的なアイデアから、思考の連想が始まることがあるのです。

 

脳内に入ってきた情報が解体され、論理的な構造に当てはめて組みなおされ、実際に応用する方法を探し始めます。これにより、真の創造性が生まれるのです。それが元となるそもそもの馬鹿げた突拍子もない質問や意見が得られなかったら、まずそんな柔軟性とクリエイティブ性に富んだ見方に辿りつくことはないでしょう。リーダーのみなさん、突拍子もないアイデアを歓迎してください!

 

さぁ、あの名言の前半部分『馬鹿な人間が賢明な答えから学ぶ』というのはどういった意味なのでしょうか。これは、価値認識に直結しています。折角マネー
ジャーが豊富な経験と体験からなる『知恵の源』を渡そうと躍起になっても、聴き手に受け取り体制が出来ていなければ、本来の効果は発揮できないでしょう。与えている仕事に対する聴き手の許容量状態は如何でしょうか?自分にはスキルもそれを磨くのに掛ける時間も無いと『心に余裕がなければ』、たとえどれほど素晴らしいアイデアだとしても、対応出来ないのです。上っ面で関心があるふりをしてみせ、心の中で『無理。』と決めている相手にいくら熱弁をふるっても、何も実行されず、成果もでず、時間と熱量のむだであった、となるわけです。相手の状況を把握し、相手にオーナーシップと責任感が生まれるような気付きに導く必要があります。そこまでの信頼関係性も、大きな影響を持ちます。デール・カーネギーには『自分の世界は自分たちが作っていくのだ』という格言があります。上司は作り上げる過程において、部下を関わせるべきである、と言い換えられます。彼らにアイデアをブレーンストーミングをさせ、馬鹿げた提案をさせながら、当事者意識と責任感の芽生えを促してください。ブルース・リーは正しかったのです。私たちは職場で何が賢明で、何が馬鹿げたことかをよく理解する必要があるのです。

 

Dr. Greg Story

President of Dale Carnegie Tokyo Japan

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