プレゼンテーション

「いい声のスピーカーですね」と言わせよう

明確で整然と聞こえる3 つのテクニック

スピーカーの中で、ボイス・トレーニングを受けたことがある人はおそらくごくわずかでしょう。ビジネスでは、大半の人が何らかのスピーチをする場に立つことになります。昇進を重ねていく中で、社内ミーティングで報告をしたり、プロジェクト・チームに話をしたり、営業の決起集会で講演したりしなければなりません。また、社外に引きずり出されて業界グループや商工会議所などでスピーチをすることになったりもします。そこで、とりあえず演壇に上がり、会話で話すときの延長みたいなものと、普通の声で話し始めます。でも、ここが問題となります。

 

集団に向かって話すときでも会話のような口調で話しても構いませんが、声を変える必要があるのです。同時に何かを起こしたいと思うなら少し工夫しましょう。マイクを使っているときでも普段よりも少し大きな声で話すのです。これには、聴衆に向かって声が通るようにするための力の強さと、声の音量の調節方法も関係します。

 

効果的に間を入れることも必要です。多くの場合、他人の前に立って話をするときは緊張するもので、そのため知らず知らずに早口になったり、文と文の間を切らずに一気に話してしまったりします。あるビジネス・パーソンにコーチングをしたことがありますが、彼は 2 分間 1つの文を一度も切れ目を入れずに話し、私はとても驚いた覚えがあります。でも、これでは私たちのメッセージが台無しになってしまいます。聴衆は私たちが言っていることを簡単に理解できない上、まるで冬の嵐のときに次々と波が海岸に打ちつけられるように複数の論点が重なり、互いに打ち消し合ってしまうからです。ところどころに間を入れて、聴衆がそれぞれの論点を耳に入れ、飲み込み、そして頭の中で処理できるようにしなければならないのです。

 

言葉を口ごもると、スピーチが理解しづらくなります。口ごもりはたいてい、早く話しすぎて十分に間を入れないときに起こります。スピードを落とした方がより効果的になりますよ。私は早口なので、ゆっくり話すと流れが止まってしまいそうで実は苦手です。でも、聞いてもらいたいのであれば、ゆっくり話さなければなりません。日本語で話すときはなおさらです。訛りがあるので、その上早口で話してしまうと、聴衆には理解するのが難しくなってしまいます。わたしも、ゆっくり話せ!と自分に言い聞かせないといけませんね。

 

早口な人の場合、こちらの話し方が何か不自然だと聴衆が思うかもしれないと心配になります。まるで、聴衆に対して失礼であるかのように思えるのです。あるとき、私はプロンプターを使っていたんですが、速度設定がいつもよりもやや遅めでした。これでは聴衆にとって私が彼らを見下しているように聞こえるのではないかと思いました。でも、あとでスピーチを聞いてみると、聴衆を見下して話しているようにはまったく聞こえませんでした。実際、明確で整然と聞こえたのです。

 

話すときは、はっきりと力強い声で始めるようにし、文末に向かって徐々に声が先細り、最後には消え入るような声になってしまうことがないようにしましょう。各文とも終わりにある程度の強さが必要です。でも、文末は調子を上げない方がよいでしょう。言った内容について確信が持てていないと取られてしまいますから。真ん中の部分では声の調子を変えましょう。これは、3 つのテクニックがあり、1 つ目は声調の範囲、つまり声の調子を上げ下げすること、2 つ目は声の強度、つまり強弱を付けること、そして、3 つ目はスピードで、時には思い切ってゆっくり話し、また早く話し始めたり、と変えるのです。

 

あのー、そのー、といった「間を取る表現」は減らすか、できれば、まったく言わないようにしなければなりません。あまりにも連発すると話の邪魔になります。聞き手を苛立たせ、彼らの関心を私たちのメッセージから奪ってしまいます。聴衆は、私たちが伝えようとしている重要な論点よりも、話し手のためらいの方に注目してしまうようになってしまうのです。最近、私はあるスピーチを聞いたのですが、どの文でも「あのー」が連発されていました。せめて「そのー」も使ってくれていたら、バリエーションがあってまだマシだったんですが。とにかく、それはマイナスに働き、彼の素晴らしい経歴の力も弱まってしまっていました。

 

DJ のような魅力的な低音の持ち主であったら、使ってみるのもよいでしょう。でも、たいていの人はそうではありませんから、一般の人はできる範囲で構わないので、強調したい特定のキーワードを声を少し低くして言うようにしてみましょう。1 つの文の中ですべての言葉を等しく扱う必要はありません。「意味」という世界は民主主義ではなく、独裁主義なのです。自分がメッセージで重要であると思った言葉のみを強調するのです。1 つの文であまりたくさんの言葉を強調してもいけません。せっかくよく考えて言葉を選んでも、効果がなくなっていまいます。ところで、声を弱めるのも、強く言うときと同じぐらいの効果が得られたりします。ひそひそと話すことで、共謀の雰囲気を生み出すことができます。聴衆はまるで秘密のグループに招かれ、自分たちだけにこっそり秘密を教えてもらっているような気になるからです。

 

自分の声の録音を再生して聞くと、自分の頭の中で聞いている声と違うので妙に聞こえます。ジョン・レノンは自分のアルバムの声について、非常に意識過剰であったそうです。にもかかわらず、彼は何百万枚ものアルバムを売ることができたわけですよね。人の声は自分で聞くのと、他人が聞くのとでは違い、これは耳の骨格という物理的なことです。

 

自分の声はどのように聞こえるのかなど気にするのは止めましょう。きちんとコントロールし、はっきりと、そしてところどころ間を入れて、重要な言葉を強調し、声にバリエーションを持たせて話すのです。それをすることで、聴衆をあなたのメッセージに引きつけることができます。そしてそれこそが私たちが求めるものなのです。映画やテレビの俳優たちのことを考えてみてください。どの人も 1 種類の声だけを持っているわけではありませんよね?彼らは自分の声を活かした優れたコミュニケーターであるからこそ成功しているのです。私たちも同じでなければなりません。

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