リーダーシップ

「自己中上司」はもう通用しない

ビジネスの世界は変わりました

企業のトップに昇り詰めるのは、勝つか負けるかのゼロサム・ゲーム。昇り詰めるか、昇り詰めないかのどちらかです。そこには勝者と敗者、そして予備軍たちがいます。野心が強い人だと、この準備は企業に入るずっと前から始まっていて、幼少の頃からすでに自分たちはリーダーになるのだと決めています。トップの座を得るには、出世階段を登って行く中で自分たちが輝けることを示さなければなりませんが、大丈夫、彼らは十分輝けます。実際、このような人たちは確実にいずれトップの座をつかめるように、自分たちの功績に光を当てます。彼らは自分勝手で自己中心的、自己宣伝が上手く…、そして時代遅れです。

 

ビジネスの世界は変わりました。意志の力だけで他者をねじ伏せ、歯をむき出して爪を立てることは昔ほど重要ではなくなりました。現代の企業では、部署内のみでなく、社内全体の広範囲にわたり、部署間でチームが協調して働くことが求められます。これには、自分だけの小舟ではなく、艦隊全体という大きな全体像と、総体的で強い責任感を持ち、大きな仕事を成し遂げるのだというパッションを抱く人が必要とされます。

 

しかし、これまでこのような人材育成はなされてこず、そのため古い慣習をなかなか壊せずにいます。従来の「上司になるための黄金律」は単純なものでした。うまく行ったら何でも「すべて自分の手柄」で、大失敗したら何でも「他人のミス」でした。すべて自分の功績であると主張する、成功したプロジェクトには自分の名前を付ける(実際にはほとんど何も貢献していないのに…)、そして上層部に大きくこびるのが定例でした。

 

自分に対する絶対的な自信とナルシズムの間には、微妙な線引きがあります。多くの上司はこの線を越え、何かにつけて自分たちがいかに素晴らしく、賢く、有能であるかに注目してしまっています。これが、これまでトップへの道を歩んだ多くの人たちに信じられてきた「私が何でも一番」の哲学です。大きな自信と大きなエゴは、たいていひとかたまりとなり、時には醜く、不快で情けないほど浅はかなものになります。

 

しかし、会社にはみんながついて行きたいと思い、チームとエンゲージして全員が力を発揮できるようにさせることができるリーダーが必要なのです。考えてみてください。もしあなたがエンゲージしていなかったら、そこで起こっているイノベーションや、仕事をより効率よく行うということに関心が湧かないでしょう。あなたは積極的には関わらないようになり、実際にはそれは自己中心的で自分勝手な振る舞いを奨励していることになるのです。自己中心的なリーダーはやる気やコミットメント、エンゲージメントを失わせます。あなたは、リーダーを目指すためには常に自分を売り込まなければならないと思っていませんか。でも、一体そんな行動規範はどこから学んだのでしょう。おそらく、常に出世志向で構えの姿勢を持ち、すべて自分の功績とすることにせっせと励むあなたの上司からでしょう。

 

もし仕事にエンゲージするクリエイティブなスタッフを望むのであれば、彼らに対して他人の良い仕事を認める心構えを持ったリーダーを与える必要があるのです。脚光や成功を独り占めにしているようでは、部下からの尊敬を集めることなどできないでしょう。部下は馬鹿ではありません。彼らには、自分たちはただの消耗品であり、自分たちの努力は評価されず、上司に手柄を奪われていると映るのです。こんな状況では、肌寒い朝にベッドから跳ね起き、職場に駆けつけ、大義のために鬼のように働くことなどないでしょう。スタッフのエンゲージメントは、チーム・メンバーに彼らが尊重されていると思わせることができたときに生まれるのです。そして、彼らが尊重されていると思わせるには、チームと彼らが達成したことにスポットライトを浴びせなければなりません。つまりそれは、他人の成功に注目する人になり、周りの人の成功を信じることが自分自身の成功につながるのです。

 

最近は、上司によるチーム・メンバーいじめがあるとすぐに問題となり、あっという間にパワー・ハラスメントで訴えられてしまいます。そのため、昔のように上司がある程度の恐怖心を利用して管理することなどできなくなりました。「酢より蜂蜜を使う方がたくさんの蝿がつかまる」ということわざが昔からありますが、こんにちの状況にますます当てはまることでしょう。個人の長所を活かす方が、仕事で悩んでいる人を厳しく叱りつけるよりも理にかなっています。良い仕事ができるようになりたいというやる気が重要不可欠なのです。失敗して、そのことを上司にしつこくなじられたら、すぐに自信を失くして、自分は仕事ができないと思ってしまうでしょう。上司の役目は、他人の功績に対して、自分たちの個人的な権威を増大させることではなく、スタッフに対して自己改善とやる気を伸ばす機会を創出することにあります。

 

部下を認めることが、このように「自己中心型の上司」から「チーム重視型の上司」に変貌するための大きな要素となります。トップエグゼクティブはみな、スタッフのやる気を生み出すことができるリーダーを求めているということを理解する必要があります。もちろん、やる気はそれぞれの心の中の問題ではありますが、上司は彼らの中にそれを生み出す環境を作るのです。部署のトップは、あなたの部下による素晴らしい努力を聞いたときに初めて、あなたのことをリーダーとして十分に評価するのです。すべての栄光を独り占めしては逆効果です。あなたが昇進することはないでしょう。あなたの仕事を引き継ぐ有能な人が下にいないということで、あなたを現職から動かせないのです。ちなみにこれはあなた自身が招いた問題です。最悪の場合、あなたは自分が自分勝手で人の注目を独り占めしたがる無作法者であることを示したことになり、大した役職には辿りつけないことでしょう。

 

自分自身のパッションを抱くことは良いことではありますが、チームにとってできるだけ役に立ち、次世代のリーダーを育てるというパッションを抱く方がもっと良いでしょう。「自己中心型の上司」から「チーム重視型の上司」になると、はるかに良い結果が得られるようになります。スタッフを育成するスキルを持ち、困難に立ち向かっていく勇気を維持することが、上司としての態度に直接つながっていくのです。優秀な人はもともと優秀なので、上司からどんな態度で接しられようが関係なく輝きます。このような人たちには多くの選択肢がありますから1つのところに永久にとどまることなどなく、もっと魅力のあるチャンスがあるところに移って行くことでしょう。才能を最大限に発揮するサポートが必要なのは残りの99%です。

 

自分たちのこと(そして、自分たちがどれだけ素晴らしいか)について長々と話している場合でしょうか。それともスタッフのことを褒め称えてあげた方がよいでしょうか。難しい選択肢ではありません。あなたは今どちらのタイプの上司ですか。また、1年後にはどちらのタイプの上司になりたいですか。将来、20年間のリーダーシップ経験を持つのか、それとも1年間のリーダーシップ経験を20回持つのか。今こそ正しく重視する対象を、上司自身からチーム・メンバーへと変える時なのです。

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