リーダーシップ

リーダーのための一期一会(Ichi-Go Ichi-E)— 忙しすぎる時代に「1回の対話」を宝物に変える方法

日本の禅の思想に由来する「一期一会(Ichi-Go Ichi-E)」という言葉があります。
直訳すると「一度きりの出会い」。
つまり、「今この瞬間の出会いを大切にせよ」という意味です。

茶道の世界では、一回一回の茶会が二度と繰り返せない「特別な場」として扱われます。
しかし現代のビジネスリーダーはどうでしょう?
メールに追われ、会議をはしごし、常に時間に追われている。
この状態で「人」と丁寧に向き合うことは、もはや稀です。

効率的すぎるリーダーは、部下を失う

リーダーの多くは「効率」を誇りに思っています。
しかし、人との関わりにおいて効率を優先すると、心が離れていきます。
「一期一会」の考え方は、スピードではなく「その瞬間を丁寧に扱う」ことを教えています。

もし部下一人ひとりとの対話を「特別な瞬間」として大切にできたら、
テクノロジー中心の無機質な時代でも、エンゲージメントは飛躍的に高まります。

ミニサマリー: 効率は成果を生むが、存在感は信頼を生む。

リーダーの本質は「注意を向ける力」

ブリスベンのジョーンズ・ラング・ウートン時代、上司のイアン・マッキーから忘れられない教訓を得ました。
夜6時過ぎ、彼のオフィスで商談の話をしていたとき、秘書が帰り際に挨拶をしました。
イアンはその瞬間、手を止め、彼女に全神経を注いで応えたのです。

当時、取締役と秘書の間には大きな上下関係がありました。
それでも彼は人としての敬意を示したのです。
その一瞬の「存在の向け方」が、真のリーダーシップだと学びました。

ミニサマリー: 敬意とは、相手に注意を向けること。

常に「忙しい」リーダーの落とし穴

私自身、やることを詰め込みすぎて「ビジネスライク」な対応をしてしまうことがあります。
しかし「一期一会」は、そんな自分への警鐘です。
一つひとつの対話を「宝物」として扱うことで、自然とペースが落ち、
「自分中心」から「相手中心」へと意識が変わります。

ミニサマリー: スピードを落とすことで、影響力は高まる。

リーダーが一期一会を実践する4つのステップ

  1. 今していることを止める
    部下が話しかけてきたら、手を止め、目を向ける。

  2. 邪魔を排除する
    キーボードを立て、スマホを伏せ、アイコンタクトをとる。

  3. 「相手の話」に焦点を当てる
    自分の用件よりも、相手にとって大切なことを聞く。

  4. 完璧でなく「誠実」であること
    答えを持つ必要はない。ただ、その瞬間に全力で向き合うこと。

ミニサマリー: 「 multitasking」ではなく「mindful listening」が信頼を生む。

悪い例:存在を無視すること

先日、あるクリニックを訪ねた際、医師はパソコンから目を離さずに診察を始めました。
挨拶もなく、顔すら上げない。
その瞬間、私は「自分はここにいない存在」と感じました。

これこそ、部下が感じる「上司の無関心」です。
数秒の注意を向けるだけで、人の心は大きく変わります。

ミニサマリー: 無視は、どんな制度よりも早く信頼を壊す。

リーダーシップの核心は「今ここ」

一期一会のリーダーシップとは、「マインドフルな存在感」を持って人と接することです。
一回の対話、一人の部下との瞬間を大切にすることで、信頼と絆が生まれます。
「今この瞬間」を丁寧に扱うリーダーこそ、チームを動かす本物の力を持っています。

ミニサマリー: 一瞬を大切にするリーダーは、一生を変える影響を与える。

重要なポイント

  • 一期一会は「1回の対話を宝物にする」リーダー哲学。

  • 効率よりも「存在感」が人を動かす。

  • 部下との会話中は手を止め、目を合わせる。

  • 敬意は「注意の向け方」に現れる。

  • 忙しさよりも、「今ここ」の姿勢がリーダーの信頼を築く。

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