トップエグゼクティブのプレゼンは、なぜ“他人が作った台本”で台無しになるのか?
カメラ・音響・テレプロンプター・スタッフ・PR会社… すべて揃っているのに、「一番肝心なスピーカーだけが一番不自由」という矛盾
日本の大企業やグローバル企業の大イベント。
会場にはスタッフが溢れ、カメラ、音響、テレプロンプター、PR会社、代理店が総出で準備に追われます。
しかし、その中心にいるはずの 社長・役員本人は、実はほとんど内容を見ていない。
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原稿はマーケティングかPR会社が作成
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テレプロンプターに“完璧な文章”が流れる
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動画を挟みすぎて、スピーカーの「生の時間」が削られる
結果として、“自社のトップが、他人に作られた台本を読むだけの人”に見えてしまう。
本記事では、実際に日本のエグゼクティブをコーチしてきた現場経験から、「他人が作ったスピーチ」から「自分の言葉で語るスピーチ」へ切り替えるための考え方と具体策 を解説します。
Q1:なぜ日本の大舞台では、プレゼンが“技術と台本”に支配されてしまうのか?
日本は「ノーミス文化」です。
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大きなイベント=絶対に失敗できない
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“何かあったら困る”という心理が最優先される
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結果として、現場では“完璧な台本”と“テレプロンプター”が重宝される
このとき、多くのスタッフの頭の中はこうです:
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「原稿通りに読んでくれれば安全」
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「動画を挟めば時間も稼げるし、失敗リスクも減る」
しかし、その副作用は致命的です。
■ 問題点
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スピーカーの 存在感と人間味が消える
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動画が主役、トップが“添え物”になる
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聴衆が求めている「トップ本人の本音・ビジョン」が伝わらない
ミニサマリー
リスク回避のために“完璧な台本”と“動画”に頼りすぎると、トップの価値が最も薄まる。
Q2:テレプロンプターに“縛られた”プレゼンは、なぜ響かないのか?
ある日本企業のトップの例。
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テレプロンプターは1画面のみ → 片側の聴衆にしか顔を向けない
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原稿を読むのに必死 → 会場全体とアイコンタクトが取れない
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そもそも原稿の中身はスタッフが作成 → 本人の言葉ではない
この状態では、どれだけ立派な言葉が並んでいても、
「心がこもっていない」
「本人の言葉に聞こえない」
と感じられてしまいます。
■ 本人の決断で状況が一変した例
そのトップは最終的にこう判断しました。
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テレプロンプターを捨てる
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原稿を“自分用のポイント”に再構成する
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テーマに沿って、自分の言葉で話す
その結果、メッセージは格段に伝わるようになりました。
ミニサマリー
テレプロンプターは“補助ツール”であって“手錠”ではない。本人の言葉こそ最大の説得力。
Q3:英語が完璧でなくても、「伝わる」スピーチは作れる
自動車業界の日本人役員が、海外で英語スピーチをするケース。
状況はこうでした:
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スライドはPR会社作成
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各ページに完璧な英語のスクリプト
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スピーチ時間は7分
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しかし、英語で全文暗記は現実的ではない
このまま進めば、
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下を向いて英語原稿を読むだけ
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会場とのアイコンタクトゼロ
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「読まされている感」満載
になってしまいます。
■ 解決策:1スライド=1センテンス=1ワード
そこで行ったのはシンプルな方法でした。
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各スライドについて、「自分にとってこのスライドが意味すること」 を一文で日本語で整理
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その一文の核心を 一つのキーワード(漢字一字・短い日本語)に圧縮
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そのキーワードをスライドに小さく表示(本人だけの“暗号”として)
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本番では、そのキーワードを見ながら 自分の言葉で英語で話す
ポイントは、
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完璧な英語ではなく、「心からのメッセージ」で勝負すること
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文法が多少崩れても、表情・声・熱量・ストーリーで十分に伝わること
結果として、聴衆は「人間・本人」を感じ取り、原稿読みよりはるかに強い印象を受けました。
ミニサマリー
外国語スピーチの本質は“完璧な言語”ではなく“本物のメッセージ”。自分の言葉で話す仕掛けを作れ。
Q4:なぜ“他人が決めた構成”に従うだけだと、ブランドリスクが高まるのか?
どれだけ忙しくても、次の発想は危険です。
「PR会社に任せておけば大丈夫」
「部下が作ってくれた原稿を読めば何とかなる」
PR担当や代理店は、
「見栄え」や「無難さ」は得意 でも、
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あなたの思考プロセス
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リーダーとしての哲学
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長年の経験からくる“本音の一言”
までは完全には理解できません。
つまり、
スピーチを他人に丸投げする =
自分のブランドを他人に委ねる行為
と言えます。
ミニサマリー
忙しさを理由にスピーチを“外注しっぱなし”にすると、最も大事な「自分のブランド」を失うリスクが高い。
Q5:エグゼクティブが“自分の言葉で話す”ために今すぐできること
① 原稿の「支配権」を取り戻す
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スライドや原稿が出てきたら、必ず自分で一度ゼロベースで見直す
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言いにくい表現やピンと来ないフレーズは、遠慮なく自分の言葉に変える
② “ポイント話法”に切り替える
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完全な原稿読みではなく、
「ポイント」「キーワード」「ストーリーフレーム」で話す -
1スライド=1メッセージを徹底する
③ 信頼できるスピーチコーチを使う
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ステークスが高い場面(株主総会・記者会見・国際イベントなど)では、
プレゼンのプロ を味方につける -
PR会社+スピーチコーチの両輪で、「見栄え」と「伝わり方」の両方を設計する
ミニサマリー
“他人が作ったスピーチを読む役”から、“自分の言葉で語るリーダー”へシフトせよ。
要点整理
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日本の大舞台では、リスク回避文化がスピーカーを台本と動画に縛りがち
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テレプロンプターやPR原稿に支配されると、トップの人間味と説得力が消える
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英語スピーチでも「完璧さより本物さ」が圧倒的に重要
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原稿丸投げは、自分のブランドを他人に預ける行為
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“ポイント話法”と“キーワード設計”で、自分の言葉で話せる土台をつくる
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ステークスが高い場面では、PR+スピーチコーチの両輪がベスト
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デール・カーネギー・トレーニング東京では、
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エグゼクティブ向けスピーチコーチング
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株主総会・記者会見・国際会議向けプレゼン準備支援
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日本語・英語バイリンガルでのメッセージ設計
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広報・PRチームを巻き込んだプレゼン戦略構築
を通じて、「原稿を読むトップ」から「自分の言葉で動かすトップ」への変革 を支援しています。
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