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日本の皆さん、ごめんなさい。

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あるスピーカーは、日本の優秀な大学を卒業し、アメリカの優秀な大学院でMBAを取得した素晴らしい学歴の持ち主でした。英語力も優れていて、彼の会社の構造や戦略、収支決算についてとても巧みに話していました。でも、2、3の簡単な基本に気を配っていたらもっと良かったでしょう。このちょっと不足していたものは、文化と態度の両方のことです。

 
日本でスピ​ーチをするときは、一連の謝罪から始めるのが慣習です。まず、聞き手の目線より上から話しかけることが失礼にあたるので、立ったまま話すことを謝罪します。次に、著名人に向かって話すことでいかに緊張しているかを伝えます。もちろん、忙しくてスピーチを十分に準備する時間がなかったことも伝えなければなりません。体調​が悪かったら、そのことも伝えます。英語でスピーチをするのであれば、英語が下手であることを謝罪するのはお決まりです。最後に、このようなつたないプレゼンテーションをしてしまったことについて謝罪することも忘れてはなりません。
 
どうして日本人のス​ピーカーたちはこんなに謝罪しなくてはならないのでしょう?日本人は謙虚さを尊ぶため、正直であることを公に表明することが求められるのです。他人の前で自信がありすぎるように見えるのは好まれません。少しでも知ったかぶりの態度を示すと評判が悪くなります。特に、トレーニングを受けておらず、単調な話し方で私たちを​絶望的なほど退屈にさせるのが、日本人のパブリック・スピーカーたちの主流です。それにならう方が他の人たちと協調できて、目立つよりも良いのです。
 
日本のパブリック・スピーキングの歴史は比較的浅く、明治時代に福沢諭吉が演説の習慣を作ったことから​始まります。大名たちが、苦労して生活している一般大衆やその上の侍たちに向かって、口頭で伝令を出すようなことはありませんでした。民衆に何か知らせるときは、御触を書いた札が立てられました。一方、西洋文明では古代より長々としゃべりまくるのが常で、それが技量と知性の証であるという考え方が受け入れられてきまし​た。日本では話し言葉の力はまだ完全には受け入れられていないため、その価値は、西洋ほどは認められていません。価値が低いということは、パブリック・スピーカーとしての優秀さもあまり注目されないということにつながります。だからこそ、周りのみんなが同じぐらいできないのなら、自分も向上しようなどと思うわけがない​のです。
 
では、日本人のスピーカーが、外国人を相手に英語でスピーチをする場合はどうしたらよいでしょう?私たち外国人は、日本人相手に日本語または英語でスピーチをするときはどうしていると思いますか?
 
たいていのスピーチは、細かい内容まで覚えていません。しかしながら、聞き手はスピーカーのことは覚えています。彼らが会場を去る時に持ち帰るのは、スピーカーに対する肯定的もしくは否定的な、どちらかの印象です。いずれの場合でも、言語的な純度の高さなどは必要ありません。外国人は、ネイティブ​・スピーカーでない人のアクセントがきつかったり、文法上の間違いがあったり、異国的で変わった用語を使ったりしたプレゼンテーションを聴くのに慣れています。
 
基本的に日本人以外の人は日本語を話せないと信じている人が未だに若干いるようで、日本語で​話そうとすると、完璧すぎていないかぎり万雷の拍手を浴びます。外国人が流暢な日本語を話すと、一部の古い世代の日本人は、彼らの言語を守る壁が崩され、この外国人は知りすぎているのではないかと心配になるようです。この外国人には気をつけろ、と。ある程度無知の方がいくらか安心させるようです。でも、若い世代は流暢​な外国人という概念にそれほど脅かされてはいません。テレビでコメンテーターやバラエティ・ショーで日本語を流暢に話す外国人を観て育っているからです。
 
日本人のスピーカーである皆さんの場合は、外国人相手にスピーチをする機会があったら、聞き手がど​んな人たちか見てみましょう。対象がビジネス・パーソン向けであれば、大半が日本ファンで、日本のことをサポートしてくれる人たちである可能性があります。その多くが日本語を流暢に話せるか、1か国語以上話せるでしょうから、この仲間内では外国語でプレゼンテーションをすることに関するいろいろ複雑な事情をすべて理解​しています。
 
また、幼少からプレゼンテーションをすることを常としてきた人たちですから、優れたスピーカーのことを称賛するでしょう。ですから、こういった聞き手に対しては、西洋式に従い、冒頭に謝罪するというお決まりの文句など一切使わないようにし​ましょう。そのかわりに、全員の注意をつかみ、他に関心を向けさせない、インパクトの強い言葉で始めるのです。今日、最も魅力的なスピーカーでさえ、プレゼンテーションの最中に、聞き手の中に手にあるモバイルデバイスをこっそり盗み見ている人がいても、それを止めさせるようなことはできません。実際、もっと大胆になり​つつあります。話をしているスピーカーの目の前で大っぴらに見ていたりすらします。
 
プレゼンテーションのリハーサルをして、主題について自分の言葉で話せるようにしましょう。スライドの進行係がいたら、事前にその人と練習しておき、スライド技術も使い​こなすのだと示せるようにします。聞き手の関心を惹きつけておけるように、レトリック(修辞的)な質問も用意しておきます。スピーチの詳細に惹きつけて離さないように、彼らがこの質問に対して実際に答えを求められるのかどうか最初は分からないようにするのです。
 
適切なクロージングを用意します。実際、質疑応答に入る前と、入る後用に2つ準備します。このスピーカーがしたように、ただ「時間が来たのでこれにて終わります」と言って、スピーチを何となく終わらせてはなりません。そうではなく、私たちが広めようとしていることを支持するための行動を、聞き手に起こさせる​ような終わり方にする必要があります。聞き手からの質問は脈絡もなく、主題とは完全に無関係だったりすることもあるので、最後のクロージングでしっかりとスピーチに関心を戻すようにします。聞き手が会場を去って行く時に、彼らの耳に鳴り響くように、重要なメッセージをもう1度繰り返します。
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外国人の場合は、日本式は真似しません。外国人は、どんなに長く日本に住んでいようが、日本人として見なされず、日本人になることを期待されないからです。最高にプロフェッショナルなプレゼンテーションをして、日本人が見て自分たちはどうしてこのようなプレゼンテーション・スキ​ルを持っていないのだろうと不思議がるようなスピーカーを目指しましょう。これはどの言語で話しても同じです。常に最もパワフルなコミュニケーションとなるように頑張りましょう。公の場で話すときは、いつも自分自身のブランドと、組織のブランドを代表しているので、あなたの言動が重要になってきます。また、日本の国際​化をさらに進めていく上で優れた手本となり、日本をもっと効果的に世界に売り込んでいけるように貢献しようではありませんか。日本の現在のプレゼンテーション・スキルのレベルから見ると、日本の真の国際化への道はまだまだ遠そうです。あなたの助けが必要なのです。
 

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